東芝は10月19日、国内外での量子暗号通信システムのプラットフォームの提供およびシステムインテグレーション事業を、今年度第4四半期(4Q)から順次開始すると発表した。
東芝では、国内事業において、完全子会社の「東芝デジタルソリューションズ」が、情報通信研究機構から、実運用環境下における複数拠点間の量子暗号通信実証事業を受注。今年度4Qに量子暗号通信システムを納入し、来年4月には実証事業を開始する予定。これまで量子暗号通信の様々な実証実験を進めてきたが、システムインテグレーション事業としては国内初の案件となる。
一方、海外事業では、英国政府研究開発機関において量子暗号通信を実用化する、BT Groupとの共同実証試験を9月16日から開始しており、また米国では、Quantum Xchangeと共にVerizon Communicationsが9月3日に公表した量子暗号通信トライアルに参加。来年度以降、英国、米国の他に、欧州、アジアの主要国でも現地事業パートナーとともに量子暗号通信システム事業を推進する予定だ。
東芝は、量子暗号通信事業を推進するため、データ通信用光ファイバーを共有する「多重化用途向け」プラットフォームと、鍵配送の速度と距離を最大化した「長距離用途向け」プラットフォームの2種類の量子鍵配送プラットフォームを開発。今後は、国内外で量子鍵配送ネットワークを構築し、金融機関を中心とした顧客向け量子鍵配送サービスを2025年度までに本格開始するとしている。また、これに先立ち、英国ケンブリッジに製造拠点を置き、今年度3Qから、特定ユーザ向けのサービス提供を開始する。
なお同プラットフォームは、10月20日から開催の「CEATEC 2020 ONLINE」ならびに、10月26日から開催の「IQT Europe」に出展される。
東芝は、20年以上の歳月をかけて量子暗号通信の技術開発に取り組み、その成果と実績を蓄積。量子鍵配送サービスをいち早く提供することで、2035年度に全世界で約200億米ドル(約2.1兆円)と見込まれる量子鍵配送サービス市場の約1/4(2030年度で約30億米ドル[約3,150億円])を獲得し、量子暗号通信業界のリーディングカンパニーを目指しすとしている。
* 2035年度の量子鍵配送サービスの市場規模。調査会社他の短・中期市場予測を基に当社で独自に長期予測。