東芝は3月5日、レーザの照射により、離れた物体までの距離情報を3D画像として得る技術「LiDAR」(※1)において、世界最高(※2)となる200mの長距離測定性能と高解像を実現する、車載用LiDAR向けの計測回路技術を開発したと発表した。
この技術による測定可能距離は、従来の車載用LiDARと比較(※2)し、2倍(※3)。
今後、さらなる測定距離の延伸および精度向上等についての研究開発を進め、2020年度までに実用化技術の確立を目指すとしている。
LiDARは、自動運転に必要な車の周辺環境を3D画像として把握するために、高度な自動運転システムの実現に不可欠な技術のひとつ。
今回東芝は、独自開発のハイブリッド回路と、独自構造ADC回路で、200mまでの長距離の測定が高精度に行え、小さな物体も検知可能なLiDARを実現した。
長距離の測定には、強い太陽光の下、遠方からの微弱なレーザ反射光を検知する必要があるが、これにはADC(※4)回路を用いた、太陽光などの雑音を小さくするための平均化処理が有効だとされる。
しかしADC回路では、駐車アシスト時などの短距離を高精度に測定する場合に必要な高速処理が難しいという問題が。
また、従来の平均化処理では、複数の異なる物体からレーザ光が反射してくる場合、解像度が劣化してしまい小さな物体を検知できずに見落とすという課題があった。
そこで同社は、短距離用回路と、長距離用のADC回路の2つで構成する独自のハイブリッド回路を開発し、ADC回路に要求される処理速度を緩和、長距離測定を可能にしたと云う。
さらに、各レーザが反射した物体が同じ物かどうかを判別し、同じ物体のみを選択して平均化処理を行うことにより、小さな物体を検知できる高解像測距技術を開発、課題を解決したとしている。
また、ADC回路に独自構造を採用することで、小型で低消費電力な回路を実現。
この技術を適用することにより、従来に比べて高性能かつコンパクトなLiDARシステムの構築が可能となるとしている。
※1:Light Detection and Ranging
※2:LiDARにおいて雑音となる太陽光強度が70キロルクス、対象物体の反射率10%の条件下において
※3:学会で発表された車載向けLiDARシステムにおけるベンチマーク
※4:Analog –to-Digital Converter(A/D変換器)。アナログ信号をデジタル信号に変換する回路