東京工業大学は11月6日、静岡大学 理学部 化学科の守谷誠講師と東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の一杉太郎教授らの研究グループが、高いリチウムイオン伝導性を示し、新しいイオン伝導メカニズムを有する有機分子結晶を開発したことを発表した。
図1. 合成した分子結晶の外観
これは全固体電池の固体電解質として応用が期待される材料であり、室温でのイオン伝導度は既報の分子結晶の最高値と同程度だが、−20℃では既報のおよそ100倍の伝導度を示す。有機固体電解質としてよく知られるポリマー電解質は低温にすると急激にイオン伝導度が低下することが一般的だが、本研究で見出した分子結晶ではそれが起きない。
例えば自動車への応用を考えた場合、寒冷地でも電池が動作する必要があり、低温でも動作する全固体電池の実現が期待できる。実際に、この固体電解質を融解させ形を整え、その後、凝固させて作製した全固体電池が、高い充放電効率で動作することを確認している。
再生可能エネルギーのさらなる活用や、電気自動車・ハイブリッドカーの普及を通した持続可能な社会の構築に向け、高性能な蓄電池の開発は社会における重要な課題となっている。今後は、分子結晶電解質の特性をさらに向上させながら、分子結晶が持つ特徴的な物性を固体電解質の新たな機能として反映させることを目指していくという。
なお、本研究成果は2020年10月28日に米国化学会誌Nano Lettersにオンライン掲載されている。