NTTデータ・ゼンリン・アルプスアルパインの3社、モビリティデータによる新事業を始動
NTTデータ、ゼンリン、アルプスアルパインの3社は1月11日、東京都内で記者会見を開き、モビリティデータを活用した交通や地域社会課題の解決に向けた取り組みで協業すると発表した。まず2023年4月から沖縄県で実証実験を開始し、順次、データ提供などの活動を全国へ広げる。(佃モビリティ総研・松下次男)
発表内容について、NTTデータの礒尚樹社会基盤ソリューション事業本部統括部長は取り組みが交通情報などのフェーズ1とさらに地域の社会問題への貢献などへと領域が拡大したフェーズ2の二段階で展開することになるだろうとの見方を示した。
まず交通課題については、沖縄県でレンタカーのドライブレコーダーの画像、映像を収集し、リアルタイム性の高い情報をレンタカー利用の観光客へ提供するプラットフォームの実証実験を4月から開始する。
これによりレンタカー利用の観光客はウエブサイト上の地図からスマートフォンなどを通じて、特定の観光地や市街地を選択することで、道路や道路周辺の画像、映像を確認することができる。
アルプスアルパインの渡辺好勝執行役員はこうした渋滞などの交通課題について「以前から渋滞の先頭の状況が分かれば、後方の人も次の行動が取りやすい」と考えて、対応できるソリューションがないかを模索していたと話す。
例えば、渋滞の先頭が、自然渋滞か事故、もしくは最寄りのスーパーマーケットへ入るための一つの車線のみの混雑かなどの要因が分かれば、渋滞を回避する方法が取りやすいというわけ。そこでデータ活用に強みを持つNTTデータなどとの協議が始まったという。
NTTデータは内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」における地理系データの流通促進に係る取り組みとして官民連携の交通環境情報ポータル「MDコミュネット」を運営し、交通事故低減や交通渋滞の削減などの社会課題に取り組んでいる。
またゼンリンは地図情報が大きく変化している中、「地図データの上に、新たな情報が加わり、事業領域が広がる」(藤沢秀幸常務執行役員)と強調する。
3社の役割は、NTTデータが全体システムの開発、サーバー構築、ゼンリンがウエブアプリケーションの開発、映像マスキング処理技術の提供、アルプスアルパインがドライブレコーダーの企画、設計、提供を担当する。
4月から開始する沖縄での実証実験では、レンタカー車両およびその利用者を対象に、サービスの利用、課金などの意向や実用化に向けた機能の改善点などを検証する。
検証内容は、渋滞地点の画像、映像データを提供することで、渋滞の状況や原因が把握できることを確認する。ドライブレコーダーを装着した車両が通過した走行経路を選択することで、選択地点の画像、映像データが提供できることを可能にする。それに個人情報を取り除くなどマスキング処理を行うことなど。
これにより、混雑しているエリアを回避して移動するといった利用者の行動変容につなげ、効率的に観光地を回れる満足度の向上や地域の交通渋滞の緩和などに貢献したいとしている。
実証実験エリアに沖縄を選んだのは、島でエリアが完結しているうえ、観光用のレンタカーが多いためとしている。
次のフェーズではこうしたプラットフォームの実証実験を経て、他のモビリティデータや他分野とのデータ連携によるサービスの高度化、参画する会員企業との連携を通じて観光、地域保全、防災、物流、業務効率化などのスマートシティを形成する幅広い分野での利活用を目指す。