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アルマイト処理中の船外機
スズキは2月26日、船外機のエンジン部品であるシリンダーブロック、シリンダーヘッド、クランクケースに、高温にも耐えられる耐食性のアルマイト処理を施す新技術を開発したことを発表した。
なお、この技術は、既に昨年8月からDF140Bの一部仕様に量産機種として初採用されており、今後、その他仕様にも順次採用される予定だ。
さて同社が船外機に耐食性のアルマイト処理を施すことにした理由は、エンジンの冷却のため、海水など大量の水をくみ上げながら走行することから、この冷却水路に腐食を防ぐ処理を施す必要があるため。
今回スズキが開発した技術では、冷却水が通るエンジン部品にむらなくアルマイト処理を施すことで、海水に対する耐食性を向上させると共に、従来の耐食性向上のための表面処理の工程と比較してCO2排出量を約50%削減するなど、カーボンニュートラルにも貢献する。
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新技術の主な特長
(1)アルマイト処理による耐食性の向上
アルマイト処理は、アルミニウムを電解液に浸けて電気を流すことにより、表面に多孔質の層を生成。今回は、表面に酸化アルミニウムの皮膜をつくることで耐食性を向上させる処理方法を採った。
より具体的には、部品を浸ける際に空気だまりが発生しないように工夫することで、複雑な形の冷却水路を、むらなく処理することを可能としている。
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(2)金属水和物を使った低温封孔処理による耐熱性向上
アルマイト処理によって生成された皮膜は、ごく高温にさらされると割れが生じ、耐食性が低下することから、高温になるエンジン部品への処理としては不適であった。
スズキは今回、表面の微細孔をふさぐために金属水和物を使った低温封孔処理を行うことで、摂氏300度の高温にさらされても耐食性が低下しないアルマイトの封孔処理方法を確立。この処理方法が量産船外機のエンジン部品に採用されるのは、世界初になる。
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(3)鋳鉄スリーブを電解液に触れさせない密閉技術
シリンダーブロックに組み込まれた鋳鉄スリーブは、電解液に接触すると電気分解による孔食が発生し、不良品になってしまうため、今回、鋳鉄スリーブに電解液を触れさせないよう専用のシール治具で密閉する技術を開発した(特許申請中)。
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(4)製造時CO2削減によるカーボンニュートラルへの貢献
従来、冷却水路の耐食性を向上させる表面処理では、化成処理をした後に塗装を行っていたが、アルマイト処理ではこの工程を省略することが可能。塗装の乾燥、焼き付け処理のためのエネルギー消費も不要となるため、CO2排出量が従来比で約50%削減できる。
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この取り組みについてマリン事業本部の三嶋秀一本部長は、「今回スズキの船外機で採用した技術は、耐食性を上げることによる商品性向上のほか、製造時のCO2を削減しカーボンニュートラルにも貢献する、量産船外機として世界初の技術です。
チームスズキで新技術開発に挑戦し、エンジン部品へのアルマイト処理を量産化することができました。今後も、全社一丸となって船外機技術を発展させ、お客様に喜んでいただける商品開発を継続してまいります」と話している。