京都の自動車部品メーカー・サンコール(本社:京都市、社長:大谷忠雄)は、EV/HEV用バスバーの生産拡大のため九州・熊本県の連結子会社サンコール菊池 に約4億円の投資を決めた。これによりバスバー事業売上で2025年度40億円を見込む。
投資拡大の理由は、世界的なEV化の加速にあたり配電部品の需要が高まっているため、なかでも銅などの金属で出来た導体棒のバスバーは、数百アンペアの大電流が走る電動車では効率的な電気の供給が動力性能や航続距離等に大きく影響するため重要部材となる。
加えて昨今では充電時間の短縮でも400→800Vへの高電圧化が見込まれているため、ワイヤーハーネスの代わりとしてインバーターやバッテリーパックなどのユニット間を繋ぐバスバーは電動車の血管ともいえる重要な役割を担っているという。
ちなみに戦時中に京都で創業したサンコールは、80年の歴史で培った塑性加工技術・溶接技術を応用したものづくりが持ち味。エンジン用弁ばねや、トランスミッション用のリングギアなど高強度材の加工技術を応用。電動化の時代に向けて独自のEV製品戦略を展開している。
そのなかでバスバーのマルチフォーミング(multi-forming)が強みのひとつとなっていった。このフォーミングとは、線状の材料を送りながら一筆書きの要領で曲げていく工法で曲げ太りや断面の管理などのノウハウを必要とする。
同社ではオリジナルのフォーミングマシンを持っており、サイズの自由度だけでなく、少量多品種にも対応できる。そんな同社のバスバー事業は、2013年に国内自動車メーカーのハイブリッド車に採用されたことを皮切りに開始。以後、愛知県豊田市の広瀬工場に一貫生産ラインを構え国内自動車メーカーの電動化を支えている。
そうしたなか、相次いで国内メーカー2社がEV向けの量産を開始。2025年量産開始の大型EVプログラムも始動したことから、熊本県の子会社・サンコール菊池を新生産地に選定。生産能力拡大を決めた。既に4月から一部生産を開始、2025年にかけて約4億円の投資による更なる増強を目指す。
今回の生産拡大先をサンコール菊池とした理由は、同拠点の技術力があった。もともとぜんまい部品製造用に使われていたフォーミング機械を、サンコール菊池の春田社長を筆頭に同拠点の技術者が自ら改造してオリジナルのバスバー設備を完成させた。
100%熊本出身者で構成されているサンコール菊池は、社員の提案を尊ぶ自由な社風と、女性でも活躍出来る職場作りが認められ、2020年に「熊本ブライト企業」に認定されている。