住友ゴム工業は6月18日、ゴム中の原子・分子運動を幅広い時間領域で測定できる放射光技術の解明に成功した。今後は、高強度かつ耐摩耗性に優れたタイヤ開発への応用が期待される。
より具体的には同社が、東北大学 齋藤真器名准教授、理化学研究所 初井宇記グループディレクター、高輝度光科学研究センター 依田芳卓主幹研究員らと共同で、1ナノ秒を含む幅広い時間領域で原子・分子・ナノ構造の運動を測定する事ができる新しい放射光技術を開発。同研究の成功を背景に、今後は高強度かつ耐摩耗性に優れたタイヤ開発を進めていく構えという。
そもそも住友ゴム工業は、これまでも東北大学 齋藤真器名准教授とタイヤの耐摩耗性能向上を目指した共同研究を実施してきた。例えは従来の測定技術では、10ナノ秒から1000ナノ秒の時間領域のみに於いて、ゴム中の原子・分子運動の測定が可能だった。
しかし耐摩耗性能向上に向けて、ゴム中の原子・分子運動をより短い時間領域で、より詳細に調べる必要があった。そうしたなかに於いて今回開発した新しい放射光技術は、0.1ナノ秒から100ナノ秒の運動を測定することが可能であるため、従来の測定技術とあわせることで、幅広い時間領域で原子・分子運動を測定することが可能となった。
なお同技術は、大型放射光研究施設「SPring-8( 世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設 / 兵庫県佐用郡佐用町 )」を活用して初めて開発されたもの。
原子・分子・ナノ構造の運動を幅広い時間領域で測定可能な放射光技術の概念図©️Makina Saito
加えてこれに最新の2次元X線カメラ「CITIUS( 理化学研究所が開発した画素サイズ72.6マイクロメートル、フレームレート17.4kHzの高性能 X線カメラ )」を組み合わせることで、動いているものの時間スケールだけでなく、空間的な大きさの同時測定も可能となった。
そして開発した技術をゴム材料に適用することで、0.1ナノ秒から100ナノ秒という幅広い時間領域で、ゴム中の分子鎖の運動の測定に成功した( 学術誌「Physical Review Letters」に掲載 / M. Saito, et al., Phys. Rev. Lett. (2024), DOI: 10.1103/PhysRevLett.132.256901 )。
最後に同研究は、国立研究開発法人科学技術振興機構が主導する独創的で国際的に高い水準の研究を推進する戦略的創造研究推進事業「CREST」にて取り組んでおり、以降は、同技術をタイヤ性能向上に応用させることでサステナブルな社会の実現に貢献していきたいと住友ゴム工業では述べている。
< 上記関連参考 >
■東北大学プレスリリース
「10億分の1秒の原子運動を見る放射光技術を開発 ─ 材料開発や生命現象の機構の理解に大きく貢献へ ─」