高速4D-CT装置の概略図および3次元的に捉えたゴム破壊が進行する様子
住友ゴム工業と東北大学多元物質科学研究所の矢代航准教授は3月8日、産学連携による共同研究で、住友ゴムが2015年に完成させた独自の新材料開発技術『ADVANCED 4D NANO DESIGN』にて開発した4D-CT(4次元X線CT)法の約1,000倍速での高速撮影に成功したと発表した。
今回の成果は、ゴムに関する様々な知見を有する住友ゴムと、世界最高速のX線CT技術を有する東北大学多元物質科学研究所の矢代航准教授との共同研究で生まれたものであり、この技術により、実際のタイヤ使用時に発生するゴムの破壊を様々な速さで観察ができるようになった。
住友ゴムでは2015年の『ADVANCED 4D NANO DESIGN』の発表以来、その基幹技術のひとつであり、世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光研究施設「SPring-8」を活用した4D-CT法で、耐摩耗性能向上を目指した材料開発を行ってきた。これまでの4D-CT法では、1枚の3D画像を撮影するのに数秒程度要するため、より鮮明な画像を得るために撮影スピードの高速化が求められていた。
そこで住友ゴムと東北大学は共同で、高速4D-CT法の技術開発を進めてきた結果、1枚の3D画像を得るのに、これまでの約1,000倍速化となる約0.01秒での撮影に成功した。これにより実際にタイヤが摩耗する時に近い状態で、ゴムが破壊する様子を連続的かつ様々な速度で3D観察することが可能となった。
住友ゴムでは、今後この技術を活用し、耐摩耗性能に優れた環境に優しいロングライフなタイヤの新材料開発を加速させるとともに、タイヤ開発および周辺サービス展開のコンセプトである「SMART TYRE CONCEPT」材料の開発に繋げていくとしている。
さらに、住友ゴムと東北大学が参画する、国立研究開発法人科学技術振興機構が独創的で国際的に高い水準の研究を推進する戦略的創造研究推進事業「CREST」にて、超高速撮影が可能なマルチビーム4D-CT法の開発が進められている。超高速マルチビーム4D-CT法から得られるビッグデータの解析に向けて、機械学習など高度情報処理との融合により、高性能な材料の開発を目指すとしている。