NEXT MOBILITY

MENU

2025年1月30日【ESG】

住友ゴムと三菱ケミカル、タイヤ用CBの資源循環で協業へ

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

破砕した使用済みタイヤ

 

住友ゴム工業と三菱ケミカルは2025年1月から、タイヤの主原料のひとつであるCB(カーボンブラック)に係る資源循環の取り組みで協業を開始する。今協業で、住友ゴムはタイヤの製造工程で発生するゴム片および使用済みタイヤの粉砕処理品(再生材料)を、三菱ケミカルに供給する。

 

これを受けた三菱ケミカルは、それらの再生材料を原料の一部としてコークス炉に投入してケミカルリサイクル(使用済みの資源を化学的に分解して、原料に変えることでリサイクルする方法)を行い、得られたタールからカーボンブラックを生産する。

 

コークス炉

 

こうして両社の連携で、できあがった資源循環型カーボンブラックは、住友ゴムが生産するタイヤの原料として使用するという循環を完成させることができる。

 

ちなみに住友ゴムは、DUNLOP(ダンロップ)・FALKEN(ファルケン)をメインブランドに、多様なタイヤ製品をグローバルに製造販売している。また予てより、タイヤ事業に於ける独自のサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」を唱え、使用済みタイヤをリサイクル原材料として活用することに取り組んできた。

 

 

上記、「TOWANOWA(トワノワ)」とは、ESG経営の実践によって循環型(サーキュラーエコノミー)ビジネスモデルを策定していてくもの。同構想はタイヤ事業で効率的なモノの流れと資源の循環を目指す「企画・設計」、「材料開発・調達」、「生産・物流」、「販売・使用」、「回収・リサイクル」の5つのプロセスで構成された「サステナブルリング」と、「データリング」で構成される。

 

 

「データリング」は、バリューチェーン上の各プロセスから収集したビッグデータ、例えば原材料のデータやタイヤの使用データなどを連携させ、シミュレーション技術、AI技術をさらに進化させる取り組みを指す。

 

 

 

なおビッグデータの収集には、住友ゴム独自のセンシング技術である「センシングコア(タイヤの回転運動を解析して、タイヤの空気圧、摩耗状態、荷重、滑りなどのタイヤが路面をどう捉えているかを検知する独自のセンシング技術)」が活用されている。こうした基礎技術を背景に同社は、資源循環型カーボンブラックの採用を拡大させ、2026年以降は、同範囲の拡大させる。

 

対して三菱ケミカルは、タイヤの主原料のひとつであり、ゴムの補強剤として使用されているカーボンブラックを生産してきた。通常、カーボンブラックは石炭・石油から得られる重質油(タール等)を原料に製造されるが、タイヤ由来の再生材料を原料として使用しケミカルリサイクルする検討も積極的に検証してきた。

 

そんなケミカルリサイクルに取り組む中で、2024年7月から開始した実証実験で既存プロセスへの影響等を充分に評価した上で、このほど資源循環型カーボンブラックの販売を開始することを決めた。コークス炉を活用し、タイヤ由来の再生材料から生産した資源循環型カーボンブラックを販売することは自社調べを踏まえ世界初の取り組みになるという。

 

現在、日本では使用済みタイヤの多くは燃焼され、熱源として再利用されているが、タイヤの構成物質の大部分を占めるゴム成分とカーボンブラックが燃焼することでCO2が排出されることになる。しかし使用済みタイヤを有効な資源として再利用するシステムを構築できたことでCO2排出量を削減できるようになるとしている。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。