破砕した使用済みタイヤ
住友ゴム工業と三菱ケミカルは2025年1月から、タイヤの主原料のひとつであるCB(カーボンブラック)に係る資源循環の取り組みで協業を開始する。今協業で、住友ゴムはタイヤの製造工程で発生するゴム片および使用済みタイヤの粉砕処理品(再生材料)を、三菱ケミカルに供給する。
これを受けた三菱ケミカルは、それらの再生材料を原料の一部としてコークス炉に投入してケミカルリサイクル(使用済みの資源を化学的に分解して、原料に変えることでリサイクルする方法)を行い、得られたタールからカーボンブラックを生産する。
コークス炉
こうして両社の連携で、できあがった資源循環型カーボンブラックは、住友ゴムが生産するタイヤの原料として使用するという循環を完成させることができる。
ちなみに住友ゴムは、DUNLOP(ダンロップ)・FALKEN(ファルケン)をメインブランドに、多様なタイヤ製品をグローバルに製造販売している。また予てより、タイヤ事業に於ける独自のサーキュラーエコノミー構想「TOWANOWA(トワノワ)」を唱え、使用済みタイヤをリサイクル原材料として活用することに取り組んできた。
上記、「TOWANOWA(トワノワ)」とは、ESG経営の実践によって循環型(サーキュラーエコノミー)ビジネスモデルを策定していてくもの。同構想はタイヤ事業で効率的なモノの流れと資源の循環を目指す「企画・設計」、「材料開発・調達」、「生産・物流」、「販売・使用」、「回収・リサイクル」の5つのプロセスで構成された「サステナブルリング」と、「データリング」で構成される。
「データリング」は、バリューチェーン上の各プロセスから収集したビッグデータ、例えば原材料のデータやタイヤの使用データなどを連携させ、シミュレーション技術、AI技術をさらに進化させる取り組みを指す。
なおビッグデータの収集には、住友ゴム独自のセンシング技術である「センシングコア(タイヤの回転運動を解析して、タイヤの空気圧、摩耗状態、荷重、滑りなどのタイヤが路面をどう捉えているかを検知する独自のセンシング技術)」が活用されている。こうした基礎技術を背景に同社は、資源循環型カーボンブラックの採用を拡大させ、2026年以降は、同範囲の拡大させる。
対して三菱ケミカルは、タイヤの主原料のひとつであり、ゴムの補強剤として使用されているカーボンブラックを生産してきた。通常、カーボンブラックは石炭・石油から得られる重質油(タール等)を原料に製造されるが、タイヤ由来の再生材料を原料として使用しケミカルリサイクルする検討も積極的に検証してきた。
そんなケミカルリサイクルに取り組む中で、2024年7月から開始した実証実験で既存プロセスへの影響等を充分に評価した上で、このほど資源循環型カーボンブラックの販売を開始することを決めた。コークス炉を活用し、タイヤ由来の再生材料から生産した資源循環型カーボンブラックを販売することは自社調べを踏まえ世界初の取り組みになるという。
現在、日本では使用済みタイヤの多くは燃焼され、熱源として再利用されているが、タイヤの構成物質の大部分を占めるゴム成分とカーボンブラックが燃焼することでCO2が排出されることになる。しかし使用済みタイヤを有効な資源として再利用するシステムを構築できたことでCO2排出量を削減できるようになるとしている。