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2023年4月18日【エネルギー】

住友ゴム、白河工場で水素エネルギーの地産地消を目指す

山田清志

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太陽光発電パネル

 

企業のカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが加速している。そんななか、住友ゴム工業は製造段階で排出される二酸化炭素(CO2)を実質ゼロに抑えたタイヤを実現。その設備と製造過程を4月18日と19日に報道陣や地元の有力者らへ公開した。太陽光発電と水素を活用したもので、白河工場で実績を積み上げて、この取り組みを国内外の工場に広げていき、2050年に企業活動全体でのカーボンニュートラルを実現する。(経済ジャーナリスト・山田清志)

 

白河工場正面

 

NEDOの助成事業として実証実験を開始

 

東北新幹線の新白河駅から東へクルマで約15分、すると左手に太陽光パネルで覆われた駐車場が見えてくる。その先に住友ゴム工業白河工場の正門がある。同工場は主力のタイヤ生産工場で、1974年8月に操業を開始した。敷地面積は約60万平方メートル、東京ドーム13個分で、1600人余りの従業員が働いている。

 

この工場は「環境で地域をリードする工場へ」を合い言葉に、緑化推進活動や生物多様性の保全、地域社会貢献活動に力を入れている。構内にはビオトーブがあり、夏にはホタル鑑賞会が開かれるという。2023年3月にはこれらの活動が評価され、「第11回緑の社会貢献賞」(公益財団法人都市緑化機構主催)を受賞した。

 

水素受入施設

 

「白河工場のタイヤ製造で使用するエネルギーには、電力と天然ガスの2種類がある。従来から電力においては、省エネルギーの推進、コージェネレーションの拡大、太陽光発電の導入、再生可能エネルギー由来のグリーン電力の調達を軸にCO2削減に取り組んできた。しかし、製造段階、すなわちスコープ1、2において、カーボンニュートラルを達成するには加硫工程でのエネルギー転換が問題となっていた」と山本悟社長は話し、こう付け加える。

 

「加硫工程では、熱と圧力を加えてタイヤを仕上げるが、そこで使用する蒸気を化石燃料である天然ガスを使用して発生させていた。そこで、代替となるエネルギーを検討してたどり着いたのが水素エネルギーだった」

 

水素ボイラー

 

次世代エネルギーとして注目されている水素は、化石燃料とは異なり、燃やしてもCO2を発生しない。将来の本格的な水素利用を睨んで、その知見をいち早く集積しようと考えた。そこで、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業として支援を受け、2021年8月から実証実験を始めた。

 

1月からカーボンニュートラルタイヤを量産

 

その事業項目は①水素ボイラーの安定的、効率的稼働の実現②燃料を水素に転換した場合の有効性評価③福島県内での水素地産地消モデルの構築④製造時のカーボンニュートラルタイヤの開発、他地域展開の4つ。

 

駐車場の屋根に設置した太陽光パネルによる発電で製造装置の電力をまかない、加硫工程で必要となる蒸気は水素の燃焼で生み出す。その水素は、郡山市のガス会社レゾナック・ガスプロダクツと、浪江町の福島水素エネルギー研究フィールドから調達する。水素エネルギーの地産地消を通じて脱炭素社会の実現に貢献しようというわけだ

 

そして23年1月、製造時のカーボンニュートラルを実現した高級車向けタイヤ「ファルケン アゼニス FK520」の量産を開始した。現時点で年間6万本程度の製造を予定しており、まずは欧州で販売していく。

 

住友ゴム工業の山本悟社長

 

「2050年のカーボンニュートラル達成に向けた重要な一歩。太陽光や水素を活用したCO2排出削減の取り組みをこれから国内外の工場で広げていく。さらに確立した水素エネルギーの地産地消スキームをモデルケースとして、その技術を世に広く提供していきたいと考えている」と山本社長は話し、産学官の連携を強化していくことの重要性を強調していた。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。