住友精密工業は7月28日、2種類の単結晶チタン酸ジルコン酸亜鉛(以下PZT)薄膜を同時開発したと発表した。
6インチおよび8インチの大口径ウエハプロセスに対応しており、2021年10月よりサンプル品の供給を行い、2022年4月より販売を開始する予定だ。
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)とは、シリコン基板などに、微細加工技術を用いてミクロンレベルの機械構造体と電気電子回路を形成し、超小型のセンサ・アクチュエータを実現したデバイス。センサ・アクチュエータとして機能するために、MEMS内での電気と力との変換技術は重要な要素であり、その手段として圧電薄膜を用いたものは圧電式MEMSと呼ばれている。
MEMSミラーやインクジェットヘッドなどMEMSに与えた電気信号で機械的な機能を発揮するMEMSアクチュエータでは、圧電薄膜には高いアクチュエーション能力(電気を力に変える能力)が要求される。一方、MEMSマイクなどMEMSが受けた力を電気信号に変換して機能するMEMSセンサでは、圧電薄膜には高いセンシング能力(力を電気に変える能力)が要求される。ジャイロセンサや超音波センサなどではアクチュエーション能力と、センシング能力の両方が要求される。この2つの圧電薄膜の能力は膜の圧電定数と誘電率という特性で評価でき、圧電定数は高いほど、誘電率は低いほど良いとされている。
圧電材料の中でも高い圧電定数を持つPZT薄膜は、これまで多くのMEMSデバイスに採用されている。しかし、従来のPZT薄膜は誘電率が大きく、高いセンシング能力を得られないという課題があった。
今回同社が開発した単結晶PZT薄膜(Novel A:センサ性能重視型、Novel B:センサ性能・アクチュエータ性能バランス型)は、アクチュエーション能力の低下を抑制しながらセンシング能力を従来比で1.5~2倍向上。アクチュエータとセンサの両機能を併せた圧電薄膜の性能を示す値(Figure Of Merit (以下「FOM」))は、世界最高性能を達成している。
住友精密工業は、この製品により、センサ機能を有するMEMSの機械構造体・信号処理回路の簡略化・小型化や、高感度で新たな機能を発揮するMEMSの登場が期待され、自動運転技術、高精細プリンタ、スマート医療、高セキュリティ認証システムなどのMEMSアプリケーションを通じて、快適で利便性の高い暮らし、安全・安心な社会の実現に貢献できるとしている。
■製品仕様比較