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2024年6月7日【テクノロジー】

世界最高性能の鉄系高温超伝導磁石の開発に成功

坂上 賢治

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試作した鉄系高温超伝導磁石/鉄系高温超伝導磁石(直径30 mm、厚さ6 mm)。左側の(1)はAI が設計したプロセス、右側の(2)は研究者が設計したプロセスで合成しました。2つの磁石を重ねて磁力を測定した。

 

研究者とAIがタッグを組み、材料合成プロセスを探索

 

東京農工大学九州大学科学技術振興機構/JST発表 )東京農工大学の山本明保 准教授、德田進之介 氏(博士後期課程修了)、石井秋光 氏(博士後期課程修了)、山中晃徳 教授、九州大学の嶋田雄介 准教授、ロンドン大学 キングス・カレッジのマーク・エインズリー講師らは、人工知能(AI)の手法の1つである機械学習を合成プロセスに活用することで、世界最高の磁力を持つ鉄系高温超伝導体の永久磁石を開発、テスラクラスの強力磁場を安定保持することに初めて成功した。

 

そのポイントは以下の通り

  • 作りやすく、使いやすい超伝導磁石が期待されていた
  • 研究者の知見とAIを融合した設計手法により、効率的に合成プロセスを探索
  • 世界記録の2倍超の磁力を持ち、磁場安定性にも優れた小型超伝導永久磁石を実現

 

高温超伝導体では、磁力の元となる超伝導電流が結晶粒界(超伝導体の結晶と結晶の間のつなぎ目)で抑制される課題があった。

 

同研究では、無数の結晶と結晶粒界から構成される多結晶材料の複雑なミクロ構造を超伝導電流が流れやすいように制御するため、研究者の経験とアイデアに基づくアプローチと機械学習を用いたAIによるアプローチとを融合した合成プロセスの設計手法を構築した。

 

<参考図>研究者と AIが同じ実験データを共有しながら、独立してプロセス設計する枠組み

 

この新しいプロセス設計手法により、世界記録の2倍以上強力な磁力を持つ小型の鉄系高温超伝導永久磁石の開発に成功し、医療用MRIレベルの優れた磁場安定性を持つことを実証した。

 

鉄系高温超伝導永久磁石は、一般的によく用いられており安価な多結晶型材料(セラミックス材料)の合成プロセスを応用できることから作りやすく、また希少な冷却剤を必要とせず小型冷凍機で運転できるため、多様な超伝導機器・システムへの応用に貢献すると期待される。

 

なお研究成果は、2024年6月7日(金)(現地英国時間)にSpringer Nature科学誌「NPG Asia Materials」のオンライン版で公開される。

 

最後に同研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 CREST(「実験と理論・計算・データ科学を融合した材料開発の革新」領域、「超伝導インフォマティクスに基づく多結晶型超伝導材料・磁石の開発」課題(研究代表者:山本 明保、JPMJCR18J4))の一環として、日本学術振興会 科学研究費補助金の助成、文部科学省 ナノテクノロジープラットフォーム事業、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所 共同利用研究の支援を一部受けて行われたと付している。

 

<プレスリリース資料>
本文PDF(383KB)

 

<論文タイトル>
“Super-strength permanent magnets with iron-based superconductors by data- & researcher-driven process design”
DOI:10.1038/s41427-024-00549-5

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。