人の目視での読み取り結果との合致率が約90パーセントの精度を実現
データ解析のスペクティ(Spectee/本社:東京都千代田区、代表取締役:村上建治郎)は6月1日、一般財団法人日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:長田太)と共に行ったAI解析で高精度な視程判定(詳細は後述)に成功した。
これは道路上に設置されたカメラで得られた画像を基にAI解析を用いて視程(大気の混濁の度合いを示して水平方向で見通せる最大の距離を示す気象用語)を判定する技術。これにより人の目視での読み取り結果との合致率が約90パーセントの精度を可能にした。
今後は、道路の安全や防災に関わる事業者などへの活用を促し、自動運転技術への応用や吹雪視程予測への精度向上、吹雪による視程障害状況解析などへの貢献を目指す。
そもそも降雪や吹雪による視程の悪化や、ホワイトアウトによる視程障害は重大な交通事故や大規模車両滞留に繋がる。
しかしこれまで道路の視程検知は、視程計の設置や道路上に設置したカメラ画像を道路管理者である人が監視することによって行われており、目視に頼った判定により大雪や吹雪による視程障害が毎年発生していた。
これからは広域的な道路の視程状況を短時間で把握できるようになる
そこでこの課題を解決するため、2019年から日本気象協会はスペクティと協力。カメラ映像をAI解析する技術開発に取り組んできた。結果、先の通り高精度な視程判定が可能になってきているという。
より具体的には、吹雪によるホワイトアウトが発生しやすい東北・北海道を中心に7台のカメラから得られた画像をAIが解析し、これを階級別視程(見通せる距離を50m未満、100m未満、200m未満、300m未満、300m以上と分けた視程)として判定。これを日本気象協会の職員による目視での読み取り結果と照らし合わせて精度を検証する。
こうした手段で2022年度冬期に、7箇所でおこなったAIによる視程判定の結果、人間による目視での読み取り結果との合致率が全体で88%と高精度に判定することができた。
50m未満と100m未満のように1階級の誤差を許容すれば、その合致率は99パーセントの高精度となる。また降雪時や吹雪時だけでなく、濃霧発生時も良好な精度で視程を検知できることも併せて確認した。
今後は同技術を活用することで、広域的な道路の視程状況を短時間で把握することができるため、より網羅的な状況把握だけでなく、個々の適切な注意喚起も可能になるという。
今後も積雪寒冷地が抱える課題解決に精力的に取り組む構え
この成果についてスペクティ取締役CDOでスペクティAI研究所の岩井清彦所長は、「少子高齢化が進み、人手不足が深刻な問題となるなか、AIによる業務効率化や労働力不足の解消は喫緊の課題です。
今回の技術開発は、MaaS領域の改良や、自動運転、地域防災などさまざまな場面での活用が期待されます。今後は更なる精度向上を図りながら今後も社会課題の解決にスペクティの高精度なAI技術を駆使して積極的に取り組んでまいります」と話す。
また日本気象協会北海道支社の丹治和博統括主幹は、「降雪や吹雪による視程障害は局地性が強く、時間変動が激しいことが特徴です。そのため、道路管理者が視程障害の発生箇所を的確に把握し、適切な対応を行うことが困難となっています。
今回の技術開発によるカメラ画像からのAIによる視程判別技術は、降雪や吹雪による詳細な視程予測にも応用でき、予測精度の向上が期待できます。
この技術の精度向上を図ると共に、降雪や吹雪に関わる気象予測技術の開発を進め、積雪寒冷地が抱える課題解決に精力的に取り組みます」と述べていた。