ソニーは、MaaS(マース:Mobility as a Service)向けに、ブロックチェーン技術を活用した共通データベース基盤(ブロックチェーン・コモン・データベース/以下、BCDB)を開発した。
このBCDBは、データの高速処理を特長とし、匿名化された利用者の移動履歴と収益配分を、一日700万件以上も記録・共有できると云う。
MaaSは、電車やバス、タクシー、カーシェアリング、配車サービス、レンタル自転車などの交通手段をITやクラウド技術で統合して、利用者に希望する目的地への最適経路や推奨する交通機関とサービスの組み合わせ、所要時間、料金等を一括して提示し、予約から決済までを提供するもの。
ソニーは、オランダ・インフラ水管理省が昨年公募したMaaSのプログラム(ブロックチェーン・チャンレンジ・プログラム)に参画し、3月末までBCDBによる実証試験を実施。ブロックチェーン技術をMaaS向けに活用し、大規模な移動履歴と収益配分の記録・共有を実現した実証試験は、業界初の取り組みであり、参加者の中で同省の要求仕様に対応できたのは、ソニーのBCDBのみであったと云う。
ブロックチェーン技術は、プログラムや情報の破壊・改ざんが困難で、複数の事業体間でデータや権利情報の共有・管理ができることから、ソニーは、このBCDBにより、MaaSに関わる様々な交通事業者が、ブロックチェーンの分散台帳に情報を記録・共有することで、信頼性と透明性を持った情報の活用とサービスへの展開が可能であるとしている。
また、欧州では現在、オランダ・インフラ水管理省を含め様々な事業体が、複数の交通事業者が関わるMaaSの推進に向けて、交通に関するデータのオープン化や非中央集権型のデータマネジメントなどの施策を展開しているが、BCDBは、非中央集権型の情報基盤として、移動記録や収益分配に加え、移動記録の分析や活用により、移動効率化への貢献や将来のスマートシティ構想に向けた施策検討にも寄与。
ブロックチェーン・チャンレンジ・プログラムで実証試験を行ったBCDBには拡張性があり、さらなるデータの高速処理化も見据えていることから、大都市の交通事業者による活用や、MaaSに限らず、スマートシティ構想における各種センサデータの記録・共有などへの応用も期待できるとしている。
ソニーグループでは、ブロックチェーン技術の様々な分野への応用を展開しており、教育分野における「教育データの認証・共有・権限管理システムの開発(※1)」や、エンタテインメント分野における「デジタルコンテンツの権利情報処理システムの開発(※2)」、またブロックチェーン関連サービス全般に対して利便性と安全性を兼ね備えた秘密鍵管理を提供する「ICカードを利用した仮想通貨ハードウェアウォレット技術の開発(※3)」などを実施。
今後もブロックチェーン技術のさらなる普及を目指して、様々な領域における応用の探索を推進していくとしている。
※1)教育データの認証・共有・権限管理システムの開発:https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201708/17-071/
※2)デジタルコンテンツの権利情報処理システムの開発:https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201810/18-1015/
※3)ICカードを利用した仮想通貨ハードウェアウォレット技術の開発:https://www.sonycsl.co.jp/press/prs201810-2/
■(ソニー)オランダ・インフラ水管理省 ブロックチェーン・チャレンジ・プログラム概要及び、実証実験結果(PDF/英語):https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/202004/20-030/document.pdf