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2024年1月9日【IoT】

ソニー・ホンダモビリティ、CESで車両搭載技術の一端を公開

坂上 賢治

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ソニー・ホンダモビリティ(SHM)は1月8日(米国時間)、ネバダ州ラスベガスで開かれる「CES 2024」にブース出展。自社コンセプト製品AFEELAの最新モデル〝AFEELA Prototype 2024〟を公開する。そこで同社は自社製品へ、より新ユーザーエクスペリエンスを搭載させるべく、これを機会に複数企業との技術連携を明らかにしている。

 

 

具体的には、現地同日にソニープレスカンファレンスを開き、登壇した川西 泉(かわにし いずみ)代表取締役 社長兼COOが、目下自社内に於いて精力的に開発中の新たなユーザーエクスペリエンスを披露。今回は「人とモビリティの関係を再定義する」をテーマに、「ADASに於けるAI活用」「創造的なエンタテインメント空間としてのモビリティ」という2つの観点で目下、開発中の技術進捗を詳しく紹介した。

 

その概要と開発テーマは上記の通りで、複数の視点が骨子となっている。

 

1. ADASに於けるAIの活用
車両に搭載された数多くのセンシングデバイスと、先端AI技術を活用したAD/ADASを目指すべく、Perception(認識)にVision Transformerを。またPath Planning(経路推定)には機械学習を使用する。同時に安心安全のために冗長性のあるシステムを構築。当該システムでは、Qualcomm Technologiesの車載用高性能SoCを採用するとした。

 

 

そのなかで第一に、モビリティサービスおよびエンタテインメント分野での新たな価値創出に向け、主にアクションゲームの開発を手掛けるEpic Games(エピックゲームズ)との協業を発表。SHMではこれを前提に、仮想空間を活用したシミュレーター開発に着手する。

 

これは車両、歩行者、地形、天候などの外的環境条件とAR技術と組み合わせた上で、それにインターネット上の情報を重畳した3Dナビゲーションマップを提案。マップデータを利用した新しいエンタテインメントやゲーミング機能の創出を目指すとしているもの。

 

センシングデータや車両データを使用したこれらの複合体験を実現するために、Epic Gamesのゲームエンジン Unreal Engine 5の最新バージョン(Unreal Engine 5.3)を使用し、今後もアップデートで丁寧に対応していく。

 

 

こうしたSHMの取り組みについてキム・レブレリEpic GamesCTOは、「センシングデータや車両データを使用したAFEELAの車内エンタテインメントの拡張には、ゲームエンジンのUnreal Engineが重要な役割を果たします。今後はモビリティの未来に対する共通のビジョンの実現に向けて挑戦していきます」と話している。

 

2.モビリティ開発環境のオープン化(仮称:AFEELA共創プログラム)
AFEELAを知性を持ったモビリティとして育て、ユーザーにとって唯一無二の存在、愛着を持てる存在になれるよう従来のクルマの価値に加えて、新しいモビリティの可能性を追求していく。

 

そのためには自社の知見だけに閉じることなく、社外のクリエイターやデベロッパーが、自由にAFEELAの上で動作するアプリケーションやサービスを開発できる環境を提供し、クリエイティビティを表現・共創できる場をデジタル上で用意する。

 

その上でSHMは人とモビリティの関係を、広く、深く、オープンに探究していく構えだ。つまりユーザーがAFEELAに愛着を持って貰えるよう、AFEELAをデジタルガジェットとして自由に表現できるものにするべく開発環境のオープン化を進める。

 

この取り組みが、モビリティに変化を起こし、モビリティと社会をつないでいくサービスに進化していくことを期待。SHMでは、ユーザーだけでなくクリエイターやデベロッパーと共に、車両を介したクリエイティブなコミュニティを発信していくという。

 

 

3.対話型パーソナルエージェントの実装
対話型パーソナルエージェントを自社モビリティに実装させていく一環としてSHMでは、新たにMicrosoftと連携。Microsoft Azure OpenAI Service を活用した対話型パーソナルエージェントの開発に取り組む。

 

これによりSHMは、モビリティをインタラクティブに感じあう存在へと進化させ、人とモビリティの関係を再定義することで「感動体験」を高めることを目指す。

 

壇上で、この共同開発についてソニー・ホンダモビリティの川西泉代表取締役 社長兼COOは、「AIは、人とモビリティの関係を再定義し、”感動体験 “を向上させるというSHMの目標を達成する上で必要不可欠な役割を果たします。

 

対話型パーソナルエージェントの開発において、マイクロソフトは私たちの重要なパートナーです。私たちのビジョンを実現するためにマイクロソフトと連携できることを光栄に思います」と話した。

 

 

またマイクロソフトコーポレートバイスプレジデントのジェシカ・ホーク氏は、「生成AIは、人々のクリエイティビティを増幅し、クリエイターやデザイナーが車内体験を変革する機会を創出する新しいキャンバスです。

 

私たちは、ソニー・ホンダモビリティとの連携を誇りに思うと同時に、AIの展望とモビリティ業界が進化する中で、SHMがMicrosoft Azureが信頼できるプラットフォームであることを確信しています。

 

それゆえに彼らのパーソナルエージェントを構築していくこの機会をとても喜ばしく思います。このような新しい技術が今後実現される中、安全で責任あるAIは、両社の最優先事項であり続けます」とコメントした。

 

 

4.車両開発におけるポリフォニー・デジタルとの協業
更にSHMは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント傘下のソフトウェア開発会社ポリフォニー・デジタルとは、人の感性・官能領域でバーチャルとリアルを融合させるべく協業することも明らかにした。

 

これは、ポリフォニー・デジタルの持つシミュレーション技術と、SHMが手掛ける実車開発に於いて、主に人の感性・官能領域でバーチャルとリアルを融合させた車両開発を目指すもの。

 

より具体的には、今年アップデートされる〝グランツーリスモ7〟で、同アプリケーション内に今発表のAFEELA Prototype 2024を収録。車両発売の前段階に於いて、ゲーム内で同プロトタイプに乗って貰える環境を整備していくという。

 

CES® 2024出展概要
主催者:Consumer Technology Association
開催日程:2024年1月9日(火)~12日(金)
開催地:米国ネバダ州ラスベガス
会場:LAS VEGAS CONVENTION CENTER, CENTRAL HALL #20908(Sony Honda Mobility Booth)
CES® 2024公式サイト:https://www.ces.tech/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。