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2024年9月9日【ソフトウェア】

PAS、出荷済車両のソフトウエア脆弱分析システムを開発

坂上 賢治

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パナソニック オートモーティブシステムズ、パナソニック ホールディングスは9月9日、両社が共同で、出荷後の車両ソフトウエアのセキュリティで脆弱性が生じるリスクを分析するソリューション「VERZEUSE® for SIRT(Security Incident Response Team)」を開発した。

 

 

この「VERZEUSE® for SIRT」とは、車両に搭載されているソフトウエアを対象に、出荷後に発見された脆弱性のセキュリティリスクを分析し、対応優先度を判定するもの。

 

そんなセキュリティソリューションの展開策と製品群について、パナソニック オートモーティブシステムズは、2014年よりサイバーセキュリティ技術・サービスブランドとして「VERZEUSE®」をグローバルに展開中だ。

 

 

なおブランド名となったVERZEUSE®は、スペイン語で「見る」を意味する「Ver」と、「神」を意味する「Zeus」を組み合わせた造語だ。それは現代社会を空または上空から神のごとく、社会の安全を見守るという意味が込められているという。

 

 

VERZEUSE®の開発陣営は、テレビ、レコーダー、携帯電話、スマートフォン、決済端末、半導体などパナソニックグループの様々な商品のセキュリティ領域に携わってきた技術者が結集。

 

それぞれの強みを活かしたサイバーセキュリティ技術の開発やオートモーティブ商品への搭載を進めてきた。そのなかでグループの知識や経験に裏打ちされた技術を社会で役立てていくべく研究開発を推し進め、今回、モビリティ向けのセキュリティソリューション「VERZEUSE® for SIRT」をリリースするに至った。

 

今回の「VERZEUSE® for SIRT」については、日々増加する膨大な脆弱性情報から、リスクの高い脆弱性を自動で絞り込み、リスク分析や脆弱性対応の時間を大幅に削減することを目指す。なお当該ソリューションは2024年9月16日~20日に開催される第30回「ITS世界会議2024ドバイ(ドバイ世界貿易センター/UAE)」に出展される。

 

 

2024年9月9日プレスリリース:「第30回ITS世界会議2024ドバイ」に出展
https://news.panasonic.com/jp/press/jn240909-1

 

先の両社で、この「VERZEUSE® for SIRT」の開発に取り組んだ背景は、今日、自動運転技術の進化、デジタル化の拡大、そしてインターネットに接続された「コネクテッドカー」の普及が進むにつれて、自動車に対するサイバー攻撃のリスクが増していることがある。

 

特に近年では、サイバー攻撃がより巧妙になるにつれて、車両ソフトウエアの脆弱性報告件数は「オープンソース・ソフトウエア(OSS)」を中心に増加傾向にある。更に車両がソフトウエアで強化される「ソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)」が進化するにつれて、車載ソフトウエアの規模と数も増え続けると見られている。

 

 

そのような環境下で自動車業界としては、サイバー攻撃から車両を防御・監視するための仕組みづくりが急務だ。それは設計、開発フェーズだけでなく車両の出荷後についても、搭載されているソフトウエアが将来に於いて、拡大していく傾向にあるなかで新たな脆弱性が生まれていないかを継続的に監視し続け、発見された緊急度合いを推し量りつつ、脆弱性のセキュリティリスクに応じた対応をとる必要があるからだ。

 

しかも膨大な脆弱性情報を押し並べて、セキュリティリスクの大小を考慮せず網羅的に分析して相次いで盲目的に対策を講じると、作業時間が膨れ上がるというコスト面の課題が生じる。またそもそも日々数多く発生する脆弱性には、セキュリティリスクの高いものと低いものが混在しているのは、確かである。

 

加えて車両は多数のECUで構成されており、今後は、個々のECUにそれぞれに最適化したソフトウエアが搭載される。従って同じようなソフトウエアの脆弱性であっても、搭載されるECUの自体の重要度により車両に与えるセキュリティリスクが異なる。

 

画像は、車両レベルでのセキュリティリスク分析に基づく脆弱性分析に係る分類例

 

また今日のSDV化の進化で複数のECUを連動させる機能も増加している。ゆえに一つの脆弱性が車両全体に与えるセキュリティリスクを正確に把握することは、今後はより難しくなることも想定できる。従って「ソフトウエア × 脆弱性 × 搭載ECU」の掛け算で分析を行う必要があるだろう。そうした環境下で、「VERZEUSE® for SIRT」が目指すべき、ソフトウエアセキュリティの設計思想と大きな特徴については以下の要素が挙げられる。

 

<VERZEUSE® for SIRTの特長>

1. 車両レベルでのセキュリティリスク分析に基づく脆弱性分析
「VERZEUSE® for SIRT」は、設計時の車両のセキュリティ脅威分析の結果や各ECUに搭載されたソフトウエアのリストであるSBOM(Software Bill of Materials)、各ECU間の接続情報を用いて、当社独自の分析アルゴリズムにより、想定されるサイバーセキュリティ攻撃の経路と影響を算出。ECU単体ではなく、車両全体でセキュリティリスクを分析する。

 

2. パナソニックグループが各分野から収集した脅威情報を活用
パナソニック オートモーティブシステムズとパナソニック ホールディングスとの協業により、パナソニックグループが工場や、家電、IoT機器など各分野から収集した脅威情報を蓄積した「サイバーセキュリティインテリジェンス」と連携することにより、セキュリティリスク判定の精度を向上させる。

 

3. ISO/SAE 21434に準拠した脆弱性分析をサポート
「VERZEUSE® for SIRT」における脆弱性分析は、ISO/SAE 21434のプロセスに則って実施され、結果を保存する。またその結果は、監査を受ける際に提出する証跡として使用できるようにする。

 

▼パナソニック オートモーティブシステムズ株式会社 ウェブサイトhttps://automotive.panasonic.com/

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。