ソリューションズ ゲート オオサカ ウメダ
パナソニックは4月28日、人工知能(AI)やクラウド技術を活用した空調関連サービスを開発する新拠点を大阪・梅田に開設すると発表し、報道陣に公開した。空調機器をインターネットに繋げ、さまざまなデータを収集することで、運転状況の可視化や遠隔操作などの管理効率化はもちろん、使用環境に応じた自動制御を行い、省エネルギーをサポートする。(経済ジャーナリスト・山田清志)
フロアをカフェエリアなど5つのエリアに分割
「ソリューションズ ゲート オオサカ ウメダ」と名付けられた新拠点は、JR大阪駅前のヒルトンプラザウエストオフィスタワーの9階にある。5月8日からの稼働で、室内には天井埋込型ジアイーノを設置して安心・安全な業務空間を演出する。
これまで大阪市門真市と滋賀県草津市にあった開発拠点を集約した。リモートワークなどの多様な働き方に対応する一方で、チームメンバーがリアルに集まり、事業アイデアの議論やコミュニケーションを促進する協業エリアなどを設け、ウィズコロナに即した質の高い対話と個人の集中を引き出す環境を整備したそうだ。
ソリューションズ ゲート オオサカ ウメダ
フロア(477平方メートル)はハリケーン・カフェ(カフェエリア)、カンバセーション・ストーム(ミーティングエリア)、ゲイル・ワークショップ(コミュニケーションエリア)、フリーズ・ガーデン(リラックスエリア)、カーム・ラボ(集中エリア)の5つのエリアに分けられている。
カフェエリアは、エントランスに近く、入り口から新しい風が吹き込む場所をイメージし、社外の人や社員が集い、ハリケーンのうねる風のように活発なコミュニケーションを促すエリアとのことだ。中央に大きなテーブルを配置し、コーヒーメーカーなどがあるキッチンスペースを設けている。さらに、天井はスケルトン仕様になっていて、パナソニックの空質空調関連機器が設置してある。
ミーティングエリアは、机や椅子を組み合わせることによって、少人数から大人数の会議ができるようになっている。66インチのディスプレイを活用して、全員での情報共有やオフィス運営上の共有情報の発信などができる。
パナソニック空質空調社の右近貞治常務
コミュニケーションエリアは、ハイテーブルや上下可動式テーブルなどで会話がしやすい環境を整えた。リラックスエリアは、9階からの眺望が見られるように座席を配置し、床の素材やライティングによって他のエリアと切り分け、気分転換やアイデアの熟考をしやすいようにした。集中エリアは、効率的な開発ができるように全席にマルチディスプレイ環境を整備した。
30年までに有償契約数3万5000件を目指す
この新拠点の開設に合わせて、4月に「カスタマーサクセス部」を立ち上げた。これまで培ってきたデータ分析やAI技術を活かし、機器の最適化やAIによる自動制御の提案を行うほか、保守メンテナンス、機器の更新まで顧客と長期的な関係を構築し、ソリューション事業拡大を目指すための組織だという。
パナソニック空質空調社ソリューション事業開発センターの高崎真一センター長によると、国内外でクラウド接続されたパナソニックの空調機器は2017年の4000台から2023年には100万台と250倍に増加しているとのことだ。
パナソニック空質空調社ソリューション事業開発センターの高崎真一センター長
これまで遠隔点検や空質の見える化などのサービスを提供してきたが、さらにそのサービスを拡大しようというわけだ。そして、ゆくゆくはプレミアムプランと称して、有償のサービスを提供しようと考えている。法人を中心に2030年までに国内の有償契約数3万5000件を目指すという。
そのために、AI・クラウド人材を2025年までに100人規模で増員を行う。現在、新拠点には89人が所属しているが、それを189人にするわけだ。「パナソニック空質空調社で働くことに興味を持ってもらうために各種発信を行って認知度を高めていく。フルリモートで全国どこからでも勤務できる環境を整備して、募集の裾野を広げていく」と高崎センター長。今回、大阪駅前のビルに新拠点を設置した最大の狙いは、IT人材の確保と言っていいだろう。
「空質空調社は、社会からの要請に対し、新たな価値とサービスの提供を続けていく。カーボンニュートラル、省エネ、BCP貢献、安心・安全、活力の創出といった価値を機器とサービス、具体的には換気空調機器に加えて、エネルギーマネジメント、遠隔監視、空質のマネジメントなどのソリューションでお客様への提供価値の最大化を目指していく」と空質空調社の右近貞治常務は話していた。