小さいフットプリントで高効率と高熱性能を提供するソリューションが実現
今日、AIワークロードの膨大な処理要件をサポートするためにデータセンタの電力消費量が増大する中で、エネルギー効率を向上させる必要性が高まっている。オンセミのT10 PowerTrenchファミリとEliteSiC 650V MOSFETの強力な組み合わせは、データセンタアプリケーション向けに、小さいフットプリントで比類のない効率と高い熱性能を提供するソリューションを実現するという。
例えば一般的な検索エンジンのリクエストに比べて、AIがサポートするエンジンのリクエストが10倍以上の電力を必要とするため、データセンタの電力需要は2年以内に全世界で推定1,000 TWh( テラワット時/IEA report, Electricity 2024 )に達すると予想されている。
このようなAIがサポートする1つのリクエストを処理するために、エネルギーはグリッドからプロセッサに4回変換され、それによって約12%のエネルギー損失が生じる可能性があるが、T10 PowerTrenchファミリとEliteSiC 650V MOSFETのソリューションを使用することで、データセンタで発生する電力損失を推定1%削減することができる。
このソリューションが世界中のデータセンタに導入された場合、年間10 TWhすなわち年間約100万戸近くの家庭の電力を賄うのに必要な量に相当するエネルギー消費を削減できるとしている( 米国エネルギー情報局<EIA>による家庭の年間電力消費量に基づくもの )。
またEliteSiC 650V MOSFET は、優れたスイッチング性能と低いデバイス容量により、データセンタやエネルギー貯蔵システムで高い効率を達成。これらの新世代シリコンカーバイド(SiC)MOSFETは、前世代と比較してゲート電荷を半減し、出力容量に蓄積されるエネルギー(Eoss)と出力電荷(Qoss)の両方を44%削減する。
動作周波数を高くしつつ小型化でき、全体的なシステムコストを削減できる
ターンオフ時のテール電流がなく、高温でも優れた性能を発揮するため、スーパージャンクション(SJ)MOSFETと比較してスイッチング損失も大幅に低減できる。これにより、動作周波数を高くしながらシステム部品を小型化することができ、全体的なシステムコストを削減できる。
これとは別に、T10 PowerTrenchファミリは、DC-DC電力変換ステージに不可欠な大電流を処理するように設計されており、コンパクトなフットプリントで電力密度の向上と優れた熱性能を提供する。
これは、超低ゲート電荷と1ミリオーム未満のRDS(on)を誇るシールドゲート・トレンチ設計によって達成され、更にソフトリカバリ・ボディダイオードと低Qrrにより、リンギング、オーバシュート、電気ノイズを効果的に最小化して、ストレス下でも最適な性能、信頼性、堅牢性を確保する。加えてT10 PowerTrenchファミリは、車載アプリケーションに要求される厳しい規格にも適合している。
以上、T10 PowerTrenchファミリとEliteSiC 650V MOSFETの組み合わせは、ハイパースケールの運用者が次世代のハイパワープロセッサをサポートするために要求されるOpen Rack V3 (ORV3)の厳しい基本仕様にも適合。
従ってオンセミのパワーソリューションズ・グループで、グループ・プレジデントを務めるサイモン・キートン氏(Simon Keeton)は、「AIと電動化は私たちの世界の形を変え、電力需要を急増させています。パワー半導体の技術革新を加速させてエネルギー効率を向上させることが、こうしたテクノロジーメガトレンドを生み出すための鍵です。オンセミの最新のソリューションは、エネルギー変換プロセスで発生する電力損失を大幅に削減し、次世代データセンタの要求に大きな影響を与えることができます」と語っている。