オール光ネットワーク+光電融合デバイスへの参画でIOWN事業が加速化
日本電信電話(NTT)のIOWN事業(アイオン/Innovative Optical and Wireless Network)が1月30日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「ポスト5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」の実施企業に採択された。なお同事業は、光電融合デバイス(半導体の光デバイス化)を開発する取り組みにあたる。
加えて以前からNTT は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT) の 「Beyond5G 研究開発促進事業」と「革新的情報通信技術(Beyond 5G<6G>)基金事業」に参画しており、今回の採択によって〝ネットワーク分野〟と〝先端半導体分野〟双方の研究開発プログラムに採択されることとなった。
この複数の事業参画を受けてNTT は、「共同提案者並びにIOWN Global Forum参加のパートナーと共に、IOWNの研究開発を加速させ、IOWNの事業化に取り組んでまいります」と語っている。
そもそもNTTは、既存の電子計算機を含むIoTインフラの限界を超えるべく、電力によって動く端末と光通信との融合を目指すIOWN構想を打ち出してきた。対して日本政府も、近年の〝半導体・デジタル産業戦略〟の中で「光電融合等ゲームチェンジとなる将来技術」の可能性に期待を寄せていた経緯がある。
つまり今回のNEDOの決定により、NTTが既存のネットワーク技術に加えて、先端半導体の分野でも政府開発事業を支援する枠組みとなり、その結果、長年NTTが温めていた次世代ネットワーク構想IOWNの実用化に向けた動きが本格加速されることになった。
ちなみにそんなIOWNとは、電気と光を融合する次世代の情報通信基盤を指すもの。2019年にNTTが同構想を打ち出した。その鍵は、既存の半導体デバイス環境下で、膨らみ続ける消費電力量の増大がある。
例えば昨今のAI研究に於ける飛躍的な電算能力の伸びに関して、来たる2045年に〝AIが人間の能力を超えるシンギュラリティが到来する〟という説が、まことしやかに語られる時代となっている。しかしその真意を語る以前に、そもそも電算機の能力が、人間を超えるには膨大な電力が必要だ。
またそれ以前に、既存の電算機は電気は発熱し易い構造であるため、電算処理がより高速になれば消費電力増加による遅延も発生しかねない。
一方でIOWNは、現時点で既に通信領域で実用化されている光技術であるが、それを電算処理にも取り入れること(電気信号から光信号に変える)で、デバイスの消費電力を100分の1に抑えるだけでなく遅延自体を抑制。通信容量も125倍にになるという。
つまり日本政府はNTTを支援していくこで、今後、電算処理に光技術が入っていくことを推し進めて、AIを含む電算処理の世界でゲームチェンジを起こす可能性に賭けている。
なお上記の採択によるNTTと共同提案者(NTT イノベーティブデバイス、 古河電気工業、 NTTデバイスクロステクノロジ、新光電気工業、キオクシア、日本電気、富士通)の研究開発の概略は以下の通り。
「ポスト 5G 情報通信システム基盤強化研究開発事業」公表日:2024年1月30日
加えて先の通り、Beyond5Gに向けた情報通信技術戦略 情報通信審議会 中間答申で「オール光ネットワーク技術」が研究開発戦略の重点分野となっており、こちらも共同提案者(富士通、古河電気工業、三菱電機、日本電気、NTTドコモ、NTTイノベーティブデバイス、住友電気工業)と共に以下の研究開発に取り組んでいる。
「Beyond5G 研究開発促進事業(一般型)」公表日:2022年7月8日
「革新的情報通信技術(Beyond 5G<6G>)基金事業」公表日:2023年11月6日