日本電信電話(NTT)は、自動車内の音声操作やコミュニケーションを快適にするマイク技術「インテリジェントマイク for car」を開発した。
「インテリジェントマイク for car」は、雑音の多い環境でも所望の音声だけをクリアに集音できる「インテリジェントマイク」を、車載向けに発展。
自動車内における背景音を抑えながら、集音したい座席の必要な音声だけを抜き出すもので、エコーキャンセラ技術や、適応ビームフォーミング、ハウリング抑圧技術など、NTTが長年培ってきた技術を結集。
走行音や、カーオーディオの音に影響されない低遅延・高品質な集音を、実現しているとのことだ。
車内でマイクで拾った音をスピーカから再生し、離れた座席に座る同乗者同士の会話を助ける「インカーコミュニケーション」や、拡声通話や音声による機器操作(いわゆる「音声操作」)を行う際、従来の技術では、ハウリングが発生する、遅延により音声が不自然になる、車の走行音やカーオーディオの音などの背景音により音声品質が劣化してしまう、という問題があった。
この技術では、電話会議装置等で培った音声処理技術を応用し、10ミリ秒未満の低遅延な音声処理や、双方向通話を可能とする高性能ハウリング抑圧によって、違和感のない自然な会話を実現していると云う。
また、適応ビームフォーミング技術により、走行音やカーオーディオなどの背景音に影響されず必要な音声だけを集音し、通話や音声操作に用いることが出来るとしている。
更に、この技術では、近年自動車への搭載が進んでいる「緊急通報システム」(※1)への対応として、「ハンズフリー通話」機能も強化。
小型マイクスピーカ端末でも音声品質を保つ工夫を加え、端末サイズを従来比70%小型化するとともに、車両緊急通報のための音声品質の国際標準規格ITU-T P.1140におけるもっとも厳しい基準 「TYPE1(全二重対応:送話音声損失レベルが3dB以下)」の基準を満たし、GOST-R55513にも準拠した。
なお、この技術は、2018年2月22日~23日開催の「NTT R&Dフォーラム2018」で展示される。
※1EUでは緊急通報システム「eCall」が2018年4月から、新車への搭載が義務付けられている。
[インテリジェントマイク for car の技術について]
通話や音声による機器操作(いわゆる「音声操作」)を行う際、従来の技術では、車種・同乗者の有無・走行環境など、様々な環境変動要因により、通話の音声品質が劣化したり、音声操作が失敗したりしてしまうことがあった。
この技術では、NTTが2015年に雑音環境下での音声認識コンテスト「CHiME-3チャレンジ(The 3rd CHiME Speech Separation and Recognition Challenge)」で、世界一位の認識率を達成した「音声歪を抑えた雑音抑圧技術ASTER」を基に、車載機器用の演算処理装置でもリアルタイムに動作可能となるよう、処理の高速化および使用メモリ量の削減などの改善を施した技術を利用。
自動車の環境に応じて適応的に集音特性を変化させることで、集音対象座席の音を適切に集音し、別座席の音声には感度の谷を向けることが可能、クリアな目的音を得ることができる。
NTT R&Dフォーラム2018 HP: https://labevent.ecl.ntt.co.jp/forum2018/info/