日本電信電話(NTT)と東日本電信電話(NTT東日本)、日本電気(NEC)の3社は11月9日、等路下に埋設済の通信用光ファイバを介して、除雪タイミングを判断できる技術を確立した。
これは先の通り、既に埋設済の未使用・未稼働の光ファイバ芯線に伝わる振動をセンシングし、その振動特性から路面状態を推定する機械学習するもの。今回、参画3社が共同でこの技術を手の内化。青森市の豪雪地帯で、道路の除雪時期を判断する実証実験(世界初の試み)を行った。
この実証実験は先の通り、青森市内に於いて昨年11月から3月に掛けてデータを計測。9月の解析でその有用性の検証完了している。もちろん今冬も同じくセンシング実証が継続される予定となっている。
今後は、これらの学習成果を踏まえて、豪雪地帯のあらゆる積雪状態に対応できるよう機械学習モデルの汎用化を進め、光ファイバセンシング技術により様々な地域課題の解決にも活かしたいという。
なお、この成果は、11月14日~17日に開催される「NTT R&D フォーラム― IOWN ACCELERATION 」で展示される予定だ。
<1>上記実証に至った背景と目的は以下の通り
日本国内での多くの豪雪地帯では、地域住民の日常生活に支障をきたさぬよう、都道路除雪作業が、主として深夜帯に実施される。
しかし深夜帯という限られた時間内作業で、除雪効果を最大化するべく、これまでは市街パトロールを昼間の時間帯に実施。具体的には、目視などによる積雪量や降雪予想、調査員の経験則を基に、個々に属人的に判断して除雪を行ってきたのが実情だった。
また、そもそも近年、地方では人口減少と高齢化が急速に進むなか、道路除雪判断を行う除雪オペレータの担い手自体が不足しており、もはや目視判断をDX化すること自体が喫緊の課題だった。
そこで3社は、こうした地域課題に応えるべく、かつてNTT東日本が通信用に敷設した未使用の地下光ファイバを利用することに決めた。これにNECが提供する光ファイバセンシング技術を組み合わせて道路下の振動データを収集。この振動を分析することで除雪を行うか否かを判断する実証実験を行った。
<2>光ファイバ振動センシング技術の特長は以下の通り
<2−1>既に張り巡らされている通信用の地下埋設済みの光ファイバが、道路から伝わる振動データを感知・収集することで、除雪工区内で複数地点の除雪判断が遠隔で実施できるようにした。
<2−2>対候性に優れたメンテナンスフリーな通信用光ファイバを、そのままセンサとして活用可能であることから、新たなセンサデバイスの設置が不要だ。
<2−3>交通流の円滑さの指標となる車速情報と、路面状態と相関を持つ振動周波数の応答特性を特徴量として抽出する除雪要否判定モデルにより、調査員の経験則に頼らず適切な除雪判断が可能になった。
<2−4>道路毎に取得したデータからリアルタイムに除雪判断も可能となる。
<3>実証実験の概要は以下の通り
<3−1>青森市内の道路地下に敷設した通信用光ファイバの上部側終端部に、センシング装置を接続。3つの除雪工区内にある市道の交通振動を、2022年11月から2023年3月までセンシング調査した。
<3−2>交通振動から車速情報と振動周波数の応答特性の統計データを取得して除雪要否判定モデルを新たに構築。その精度を評価(実証実験を通じて、積雪による路面状況の変化により車速や振動周波数の特性が変化する旨を新たに発見し、モデル化)した。
<4>実証実験の成果は以下の通り
通信用光ファイバが除雪工区内の市道地下に張り巡らされている利点を活かし、複数の除雪工区内で除雪判断を行うことに成功した。
除雪要否判定モデル。
<5>各社の役割
・NTT:センシングデータ解析、機械学習による除雪判定方法の提案・実証。
・NTT東日本:路面状況の観測および実証実験に用いる設備の選定・提供。
・NEC:光ファイバセンシング測定の実施、車速計算アルゴリズムの構築・提供。
<6>今後の展望
3社は、この成果を踏まえて、将来的にはリアルタイムでの除雪実施判断に繋げて、豪雪地域の課題解決を目指す。また更に通信インフラを活用して収集可能な市街の振動データを広域で解析することにより、光ファイバセンシングの応用技術を確立させる構えだ。
[問い合わせ先]
・NTT 情報ネットワーク総合研究所 広報担当
メール:nttrd-pr@ml.ntt.com
・NTT東日本 広報室 報道担当
電話:03-5359-3711
メール:houdou-gm@east.ntt.co.jp
・NEC トランスポートネットワーク統括部
メール:dfos_inquiry@domestic.jp.nec.com