EV・HEV向け「同軸e-Axle遊星減速機用ニードル軸受ユニット」
NTNは5月24日、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)で使用されるe-Axle向けに「同軸e-Axle遊星減速機用ニードル軸受ユニット」を開発した。
同商品は、ニードル軸受(保持器付き針状ころ)とシャフトをセットにしたもので、保持器やころ、シャフトの各要素に改良を加え、耐ピーリング性能や高速回転性能、耐モーメント荷重性能を向上させることで、小型・高速化を背景に過酷さを増す同軸e-Axleの使用環境に対応し、車両の省燃費・省電費化に貢献する。
開発の背景は、近年、開発・普及が進むEVやHEVには、主な駆動源としてモータ、インバータ、減速機を一体化したe-Axleが搭載されるケースが増えていることにある。e-Axleのうち、遊星減速機を使用する同軸e-Axleには、断面高さが小さく高い負荷容量を持つニードル軸受が使用される。
一方、同軸e-Axleは高効率化を目的に潤滑オイルの低粘度化が進んでいるが、低粘度化により油膜が薄くなると、軸受の軌道面ところ(転動体)が直接接触することで、軸受の損傷の原因となる微小なはく離(ピーリング)や亀裂が表層に発生する。
また車両の省燃費・省電費化に伴うe-Axleの小型化・高出力化により、軸受の高速回転対応も必要となってきている。
加えて、遊星減速機には静粛性を確保するため、歯すじがらせん状に入ったヘリカルギヤ(はすば歯車)が使用されるが、軸に対して歯すじが斜めに入ったギヤ同士が噛み合うことで、ギヤを傾けようとするモーメント荷重が発生する。
更に同軸e-Axleでは、大きな減速比を得るために、軸方向に長い段付き遊星ギヤを用いるため、シャフトも長くなり、荷重がかかった際にたわみやすくなる。結果、モーメント荷重とシャフトのたわみにより、軸受のころの面取り近傍の面圧が上昇し、それに伴う軸受寿命の低下が課題だ。
それらを踏まえ同開発品は以下の特長を持たせた (同社従来品比)
1. 耐ピーリング性能
シャフトの熱処理条件を最適化することで、異物などによる表面損傷への耐久性を高め、ピーリング寿命を当社従来品比で約30%向上させた。
2. 高速回転性能
材料変更や溶接部の設計、熱処理の諸条件を最適化し、保持器の疲労強度を高め、高速回転性能を当社従来品比で約10%向上させた。
3. 耐モーメント荷重性能
ころのクラウニング形状の最適化に加えて、シャフトの材料変更により塑性変形によるシャフトの曲がり量を約70%低減した。これにより、モーメント荷重の発生時に於いて、面圧を低減し、寿命低下を防止することができる。
なおNTNは、同商品を5月24日~26日にパシフィコ横浜で開催される「人とくるまのテクノロジー展2023 YOKOHAMA」で出展している。
(参考)同軸・平行軸e-Axleについて
e-Axleにはモータの出力軸と同軸に遊星減速機を配置する「同軸e-Axle」と、複数の軸を用いて減速を行う「平行軸e-Axle」がある。複数の軸を用いる「平行軸e-Axle」に比べて、「同軸e-Axle」はe-Axle本体をコンパクト化しやすいというメリットもある。
今回の同軸e-Axleの遊星減速機は、モータの回転を入力するギヤと、入力ギヤの回転を減速する遊星ギヤ、ハウジングに固定されているリングギヤの3つで構成されている。
遊星ギヤは入力ギヤ側に大径、リングギヤ側に小径の2つのギヤを用いることで、1つの遊星ギヤで2回減速を行い大きな減速比を作り出し、必要なトルクを生み出す。遊星ギヤは大径と小径の2つのギヤを用いることから、シャフトが長軸となる仕組みだ。