ニデック(旧:日本電産)とルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)は6月5日、電気自動車(EV)向けの駆動モータと様々なパワーエレクトロニクスを統合した次世代e-Axle(イーアクスル)(X-in-1システム)の半導体ソリューションでの協業に合意したと発表した。
現在、EVには、e-Axleと呼ばれるモータとインバータ、ギヤ(減速機)を一体化した3-in-1ユニットの採用が増えている。
また、さらなる高性能・高効率と、小型軽量・低コストを同時に実現し、車両開発の効率化を図るため、この3-in-1ユニットにDC-DCコンバータやオンボードチャージャ(OBC)などのパワーエレクトロニクス制御を統合する動きが加速しており、特にEV先進国の中国市場では、複数の自動車メーカで複数の機能が統合されたX-in-1ユニットがプラットフォーム化され、多くの車種で、その採用が進んでいると云う。
ニデックとルネサスは、複数の機能を統合して一層複雑になったX-in-1では、車載グレードの品質維持がさらに困難となるため、自動車の安全性を担保するには、診断機能や故障予知などの予防安全技術の開発が必要になると認識。今回、ニデックのモータ技術とルネサス半導体技術を持ち寄り、業界最高水準の高性能・高効率と小型軽量・低コストを同時に実現するX-in-1システム向けに、高品質・高機能なPoC(Proof of Concept:概念実証)を共同開発することで合意した。
協業では、その第一弾として、年末までにモータとインバータ、ギヤに加え、DC-DCコンバータ、OBC、電力分配ユニット(PDU)を搭載した6-in-1のPoCを、また2024年には第二弾として、バッテリマネジメントシステム(BMS)他も統合し、さらに集積度を高めたX-in-1のPoCを開発することを計画。
第一弾のPoCでは、パワーデバイスにSiC(炭化ケイ素)を搭載するが、第二弾では、DC-DCやOBCのパワーデバイスを高周波動作が得意なGaN(窒化ガリウム)に置き換え、さらなる小型化と低コスト化を図ると云う。
このPoCをベースに、ニデックでは、次世代e-Axle早期製品化を図り、ラインナップを拡充すると共に量産体制を構築して市場をリード。ルネサスでは、これをe-Axleのリファレンスデザインのベースとして活用することで、複雑化するX-in-1システム向けにターンキーソリューションを開発、提供していく予定だと云う。
両社の協業について、ニデックの副社長執行役員で車載事業本部長の岸田光哉氏は、以下のように述べている。
「ニデック創立50周年の節目に、当社の創業精神である「世界一」を目指す、次世代e-Axle向け、X-in-1システム開発をスタートすることは非常に大きな挑戦です。ニデックグループの持つ車載機能の強みを結集し、車載半導体リーダー企業のルネサスとPoC開発を実現することで、両社がグローバル企業として、世界を牽引していくことを目指します」。
また、ルネサスの執行役員兼ハイパフォーマンスコンピューティング・アナログ&パワーソリューショングループの共同ジェネラルマネージャーであるVivek Bhan氏は、以下のように述べている。
「e-Axleに於いて豊富な市場実績を誇り、システムノウハウを持つニデックと協業できることを大変嬉しく思います。ルネサスは、本協業においてハードウェア設計だけでなくソフトウェア開発でも主要な役割を果たすことにより、極めて短期間でのPoC開発を実現します」。