日本ガイシ と三菱重工業 は5月22日、クリーン燃料・原料の利用拡大を見据え、〝バイオエタノール〟と〝e-メタノール〟の製造プロセスを低コスト・高効率化する2種類の「膜分離脱水システム」の共同開発を開始すると発表した。
なお、2種類の「膜分離脱水システム」の内の1つ目は、ガソリン代替としてのクリーン燃料と次世代航空機燃料であるSAF(Sustainable Aviation Fuel)の原料としても注目されている〝バイオエタノール〟の製造工程に於いて、最もエネルギーを消費する脱水工程を、従来方式から膜分離方式(※)に置き換えることで、大幅なエネルギー削減を図るというもの。2つ目は、同じく次世代クリーン燃料として注目されている、水素とCO2を原料とする〝e-メタノール〟の製造における脱水工程を膜分離方式に置き換えることで、消費エネルギーの大幅な低減を図るものであると云う。
〝バイオエタノール〟は、トウモロコシやサトウキビを主な原料とする植物由来燃料で、米国・ブラジルを中心に自動車燃料として広く利用されているほか、SAFの主要原料の1つとしても期待。一方の〝e-メタノール〟は、主に船舶の次世代燃料として注目が集まるなど、共にクリーンな燃料・原料として将来的な需要拡大が見込まれていることから、両社は、同システムの早期実用化と安定供給体制の構築を目指して開発を推進。
三菱重工は、メタノール製造プラントをはじめとした、国内外での多数の化学プラント納入実績や、これまで培ってきたメタノールおよび各種化学品のハンドリング技術に関する深い知見を、また日本ガイシは、化学プロセスや浄水分野で培った固液分離膜技術と独自の成膜技術に基づき、分離精度と耐久性に優れた世界最大級のセラミック膜に関する深い知見を活かすことで、この開発に臨む。
三菱重工グループでは、2040年のカーボンニュートラル達成に向け、エネルギー供給側で脱炭素化を目指す「エナジートランジション」に戦略的に取り組んでいることから、水素を必要としない植物由来の〝バイオエタノール〟や水素とCO2から作られる〝e-メタノール〟といったクリーン燃料の高効率な製造プロセスの開発と、その事業化を推進することで、脱炭素技術の早期確立・社会実装を図ると共に、持続可能なカーボンニュートラル社会の実現へ貢献していくとしている。
また、日本ガイシ・NGKグループは、カーボンニュートラル実現に寄与するため、4つの戦略からなる「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」を策定し、水素・CCU/CCS(CO2の回収・利用・貯蔵)関連技術や製品を開発・提供することを推進していることから、独自のセラミック技術をコアに従来は困難とされるものを実現すると共に、そのキーデバイスが社会に実装されるところまで手掛けていくことにより、持続可能な社会の実現に貢献していくとしている。
※分子の大きさの違いを利用して、膜を用いて物質を分離する方式。