日本電気(NEC)傘下で企業向けに情報通信機器の製造・販売を担うNECプラットフォームズ は4月18日、自社の那須事業所 (栃木県那須塩原市)内に〝大型電波暗室〟の新設・運用を開始した。
この那須事業所は、先の通りで衛星通信に用いられる大型パラボラアンテナを筆頭に、携帯端末に内蔵される小型アンテナに至るまでの幅広い種類のアンテナの開発・生産を行っている。
加えて、アンテナに関連する無線通信のコンサルティングから、事前検証、製品開発、生産、評価、納入後の工事支援・調整、維持メンテナンスまでを、一気通貫で手掛けるグループ唯一の拠点となっている。
そうしたなかで昨今、無線通信は携帯電話、航空機、船舶、衛星・宇宙など、様々な分野で利用されており、無線通信にはアンテナが必要不可欠であることから、その重要度が増し続けている。
そんなアンテナの開発・生産では、アンテナの指向性パターンや定在波反射などを包括した仕様通りの性能が出ているかを正確に測定・評価をする必要がある。またアンテナを精緻に測定・評価するには、干渉やノイズのない電波暗室が必要となる。
そこて那須事業所では、既に3つの電波暗室を設置している。しかし今回は、無線通信の高度化に伴うアンテナの需要に応え、より多様なタイプのアンテナに対応すること。日進月歩で高周波数化しているハードウエアに対応するため、改めて4カ所目となる大型の電波暗室を新設した。
新設された電波暗室は、アンテナの性能を正確に測定するため、天井・壁・床の6面を電波吸収材で覆っている他、30mの測定距離を確保できている( 関東近郊では最大級の設備/リリース日時点での自社調べ )他、多種多様なアンテナに対応していることから超短波からミリ波までの周波数測定が可能だとしている。
NECプラットフォームズは、将来的には、この電波暗室の活用をNECグループ内に加えて外部への拡大も視野に据えている。
また天候に左右されない屋内環境での高精度な測定により、これまでのアンテナ開発事業だけでなく、生産の効率化も図ると共に、高品質なアンテナの提供を通じて、NECグループが拡大を目指す社会インフラ事業へ貢献していきたいとしている。
[大型電波暗室の主な特長]
1.6面に電波吸収材を設置、測定距離が30m
天井・壁・床の6面に電波吸収材を設置し電磁波の反射を抑え、高精度な測定が可能。また測定距離30mの確保ができるため、より高い周波数にも対応可能。
2.幅4m、高さ5mの大型開口部
大型開口部を備えることで、大型で重量のあるフィードやアンテナの搬入が可能。受信側に設置した3軸ポジショナ(対象物を水平2軸、垂直の3方向にそれぞれ自由に動かす装置)を設けているため、最大1tまで対応している。
3.超短波からミリ波まで対応
超短波からミリ波までの周波数に対応。また専用のソフトウェアによる自動測定機能によって、より精密な測定が効率的にできる。
<概要>
– 運用開始時期:2024年4月
– 暗室サイズ:幅12m×奥行38m ×高さ12m(有効10m×30m×10m)
– 送受信間距離:~30m
– クワイエットゾーン:2mφ
– 測定周波数:50MHz~50GHz(現状の測定系)
– シールド特性:~1GHz:100dB/~10GHz:80dB/~50GHz:60dB
– 反射特性:100MHz~1GHz:-30dB以下/5GHz:-40dB以下/10GHz:-50dB以下/50GHz:-60dB以下
NECプラットフォームズは、ものづくりを通じて安全・安心・効率・公平な社会価値を創造し、人びとが豊かさや生きがいを感じられるような社会の実現に貢献していくとしている。