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2024年6月10日【IoT】

NEC、モビリティ向け高精度QoE予測技術を開発

坂上 賢治

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NECは6月10日、安心・安全・効率的なモビリティ社会を実現する技術として、コネクティッドカーやドローンなどの移動体に安定した通信を提供可能な接続先を予測する高精度QoE予測技術を開発した。

 

同技術は、不必要なハンドオーバーを最小限に抑制し、ハンドオーバー時の通信品質劣化を低減することができる。また基地局などの通信機器の消費電力も抑制するため、環境負荷低減にも貢献する。

 

近年、モビリティ市場では、コネクテッド化、安全運転支援システムの高度化、自動運転の実用化が進む中で、安心・安全を確保するため高品質なモバイルネットワークが重要になっている。

 

そのためモバイルネットワークには、移動体がどのような環境にあっても、使用中のアプリケーションの品質を高い水準で維持できることが求められる。

 

そこでNECは現在発生する、移動体に対するモバイルネットワークの通信品質低下が、移動体が通信する基地局の切り替え(ハンドオーバー)が不適切に行われることに起因することに着目。十分な通信品質を維持できるよう不必要なハンドオーバーを抑制する高精度なQoE予測技術開発に取り組んだ。

 

 

より具体的には、マルチモーダルAI技術により、モバイルネットワークの通信情報と移動体の映像情報から得られる通信ログや動画などのデータから、移動体のアプリケーション品質を高品質に維持できるネットワークまたは基地局を高精度に予測する技術を磨いた。これにより、効率的なネットワーク選択、基地局のセル選択、そして運転支援が可能になる。

今回の開発技術の特長は以下の通り

 

1.移動体に最適な新しい評価基準
移動体の映像品質やモバイルネットワークの通信品質は移動に伴って変動するため、国際標準化団体である国際電気通信連合(ITU)で検討されている車両の遠隔監視・遠隔制御を行うシナリオのQoE(Tele-operated Driving QoE、以下 ToD QoE)で算出したスコアは実際のQoEよりも高く評価されることがあり、実態に即していないという課題がある。

 

そこで本技術では映像・通信品質の時間変動量がQoEに与える影響をスコア化してToD QoEを再計算することで移動体に最適な評価基準を設定し、高精度なQoE予測を実現する。

 

2.最新のAI技術を用いた高精度な環境分析
移動体の走行環境や天候などの周囲の環境状況によってモバイルネットワークの無線通信品質は変化するため、移動体に対して高い通信品質を維持することが難しいという課題があった。

 

そこで、映像認識AIとLLMを組み合わせ、ドライブレコーダーなどの映像から走行環境や移動状況および運転特性を理解する技術を取り入れた。

 

このAI技術により、移動体が置かれた環境を映像認識AIで分析し、渋滞や建物の密集状況などを文章化しLLMで総合的に文脈理解することで、これから先に起こるであろうことを判断して移動体に最適な基地局を提案することが可能となる。結果、移動体ごとに異なる複雑な環境状況にも対応したQoE予測を高い精度で実現できるようになった。

 

3.アプリケーションごとに最適化されたハンドオーバー制御
モバイルネットワークでは、一般的には無線通信品質に基づいて基地局をハンドオーバーしているが、モビリティの遠隔監視や遠隔制御のようにアプリケーション毎にデータサイズや通信時間が異なる場合、データ通信中のハンドオーバーによって通信応答性能が低下しアプリケーションの品質を維持できなくなる課題があった。

 

そこで今技術では、通信データ特性とQoEの予測結果からアプリケーションに必要なQoEを満たせないセルを特定し、RAN側に情報を提供することにより通信途中の不必要なハンドオーバーを適切に抑制して、高品質なモバイル通信を実現する。

 

更に今後の展開で、NECは2024年度内に、本技術を用いた実証実験を行う予定。その後も開発を進め、QoE分析・制御装置として、2025年度内に実用化することを目指す。

 

更に映像認識AIとLLMを組み合わせた本AI技術の応用ソリューションとして、運転操作の滑らかさを基準とした運転支援ソリューションを提供予定としている。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。