インテルの子会社であるモービルアイ(Mobileye)は、1月11日(米国東海岸時間)、コンシューマー・エレクトロニクスの見本市「CES international 2021(※)」で、グローバルでの自律走行車の実現に向けた戦略とテクノロジーについて発表した。
CESでの2回のセッションで、モービルアイ社長兼CEO(最高経営責任者)アムノン・シャシュア氏は、グローバルでの事業戦略について説明。
「インテルのバックアップ、そしてモービルアイの三位一体アプローチは、私たちが前例のない方法で規模の拡大を可能にすることを示唆しています。当社によるすべての計画は、初期段階から地理的・経済的に迅速なスケーラビリティーの実現を目指してきました。本日の発表は、当社のイノベーションがいかにその戦略を実行できるかを示しています」と語った。
モービルアイの三位一体アプローチ
モービルアイの三位一体アプローチを説明する中で、シャシュア氏は、人間のドライバーよりも優れたセンシング・ソリューションの重要性について語り、同社のRoad Experience Management(REM)マッピング・テクノロジーや、ルールベースのResponsibility-Sensitive Safety(RSS:責任感知型安全論)ドライビング・ポリシー、カメラやレーダー、LiDARテクノロジーをベースにした異なる2つの冗長性を持つセンシング・サブシステムというテクノロジーが、どのように今回のソリューションを実現しているかを解説。
メインセンサーとして低コストのカメラと冗長性を持つ補助センサーを使用したセンシングシステムを組み合わせ、人間の1000倍以上の高い安全性を実現する「True Redundancy」を安価・迅速に提供することで、テクノロジーとビジネスの両面からアプローチし、自律走行車の普及拡大に対する課題を解決すると語った。
新たなレーダーとLiDARテクノロジー
続いてシャシュア氏は、道路上の安全性向上の鍵となる、電波系と光学系による検知・レンジセンシングが強化された自律走行車の将来像について説明。
インテルと投入する、レーダーとLiDARの高度な機能を提供するこのソリューション(ソフトウェア定義のイメージングレーダー・テクノロジー)は、2304チャンネル、100DBのダイナミックレンジ、40DBcのサイドローブレベルを持ち、自律運転も想定した運転政策に対応するために十分なセンシングステート(周辺環境モデル)の構築も可能。また、完全にデジタル化された最先端の信号処理や様々なスキャンモード、豊富なローデータ検出、マルチフレーム・トラッキングを備えると語った。
また、インテルの独自技術を活用したシリコン・フォトニクス製造における、アクティブレーザー素子およびパッシブレーザー素子のシリコンチップへの搭載手法についても説明。
シャシュア氏は、2025年投入予定のLiDAR用SoCについて、「私たちは、これをフォトニック集積回路(PIC: photonic integrated circuit)と呼んでいます。184本の垂直線があり、その垂直線は光学的に移動するという仕組みです。その仕組みに対応可能な製造工場は非常に少ないため、LiDAR製造におけるインテルの大きなアドバンテージとなります」と述べている。
世界を網羅したマップがあらゆる場所に自律走行車を展開
シャシュア氏はまた、モービルアイのクラウドソーシングによるマッピング・テクノロジーのコンセプトについても説明。
他のアプローチとは異なる自律走行車が環境を理解・コンテキスト化する上での重要なセマンティック情報に焦点が当てられた同社のマッピングプロセスは、一日約800万キロメートル近くを網羅し、これまでに延べ約10億キロメートルの地図を自動作成。
同社は、既に約100万台が配備されているこの技術を搭載する車両を用い、自動作成される自律走行車向け地図によるスケーラブルなメリットの実証に向けて、新たに4カ国で、専門のエンジニアを派遣することなく自律走行車の展開を開始。
モービルアイの顧客をサポートする同社現地チームには、人材ではなく、安全のための適切な訓練が実施された後に走行可能となる車両を派遣するという、昨年ミュンヘンやデトロイト市内で実績があるアプローチを採用すると語った。
※CES(Consumer Electronics Show)2021:11~14日(米国東海岸時間)にオンライン開催。
■Mobileye:https://www.mobileye.com/