初号機完成式典の様子
三菱重工業は5月24日、世界最大規模の超伝導コイルであるトロイダル磁場コイル(以下「TFコイル」)計4基を完成させたことを発表した。
このTFコイルは、南フランスのサン・ポール・レ・デュランス市で建設が進められている核融合実験炉イーター(以下「ITER」)向けに国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)から受注した全5基のうち予備1基を除いたもの。
同社によると、完成したTFコイルは、神戸港から南フランスに向けて順次積み出された後、2025年のITERの運転開始に向け、ITER機構による現地での据え付け作業が進められる。また、残る予備1基は2022年に完成予定だとしている。
今回完成した4号機
現地で組立作業中の初号機(奥)と2号機(手前)
三菱重工業は、2020年1月に世界初となるITER用TFコイル初号機を完成させ、二見工場において完成披露式典を開催している。この初号機と2020年3月に完成した2号機は、現在南フランスの現地において実験炉への設置作業が進められており、2020年11月に完成した3号機も同じく現地での受け入れ試験が完了した。
炉内で核融合反応を起こすためには、高温・高密度状態(プラズマ状態)になった重水素と三重水素の燃料を磁場で閉じ込める必要があるため、ITERの中枢機器であるTFコイルには、プラズマを高精度に保持するための高い製作精度と数万トンの強い磁場力に耐え得る肉厚構造が必要となる。三菱重工業は今回、ITER向けTFコイル全19基のうち5基の最終組み立て工程を担っているほか、TFコイルに用いられる構造物や巻線を製作しており、高さ16.5m、幅9m、総重量300トンの巨大な超伝導コイルに対して1万分の1以下の精度を実現している。
現地に到着した3号機