高い耐熱特性により、従来電極仕様品比約 5 倍のサイクル数を実現
マクセルは5月30日、全固体電池の電極技術を発展させ、作動上限温度を150°C に引き上げる技術開発に成功した。
昨年 6 月に量産開始したセラミックパッケージ型全固体電池「PSB401010H」は従来のリチウムイオン電池では使用できなかった高い温度域で使用可能なことから好評を得ている。
その間、多岐に亘る分野にて採用やサンプル評価が実施されるなかで、これまでに「PSB401010H」の放電上限温度である125°Cを超える用途での使用要望を多数得た。但し、その対応には、医療向け滅菌工程や半導体製造工程、車載用途など高温環境下で設備周辺の温度やその他の情報をセンシング・モニタリングすることが必要な分野となる。
しかし同社は同要望を受け、全固体電池の使用用途を拡大すべく耐熱特性向上の開発を進め、その過程で全固体電池の劣化メカニズム解析により、正極活物質と固体電解質との界面での副反応が高温に於ける劣化の主要因であることを突き止めた。
そこで同社は、電極の材料や配合などの電極設計を大幅に見直すことで、150°Cの高温下で充放電を繰り返すサイクル試験に於いて、放電電圧が1.0V に低下するまでのサイクル数を従来電極仕様品との比較で約5 倍(セラミックパッケージ型全固体電池「PSB401010H」との比較)に向上させることに成功した。
今後は当該技術を応用した製品開発を進めることで、高温下での電池寿命の減少により発生していた頻繁な電池交換工数の削減に繫がる他、高温下でのセンシング・モニタリングが行えるため、より高精度な設備制御による生産歩留や品質の向上が期待できる。
マクセルでは、「多くの社会課題を解決するため、既存の電池では使用できなかった領域の用途にも使用できる、長寿命、高耐熱、高出力、大容量の 4 つの軸で、高性能で信頼性の高い全固体電池の開発を進めています。
今後も全固体電池のラインアップを充実させるとともに、無線給電やエナジーハーベスティングなどの技術と全固体電池を組み合わせたモジュール製品の検討も進め、製品を通して社会課題の解決に貢献することを目指していきます」と結んでいる。