川崎重工は、宇宙ごみ(スペースデブリ)除去衛星運用のための地上局を、岐阜工場に設置した。
地上局は、2020年度に打ち上げ予定の宇宙ごみ除去実証衛星(以下、実証衛星)を用いた実証試験のコマンドの送信やデータの受信といった運用のほか、川崎重工が今後参入を目指す衛星データ利活用ビジネスにおいて、同社製以外の様々な衛星と連携したデータの送受信や、衛星データの解析・提供などの機能を担う。
現在宇宙空間には、過去に打ち上げられたロケットの残骸、運用を停止した人工衛星およびそれらの破片などの宇宙ごみが、2万個以上(直径10cm以上のもの)軌道上を周回しており、国際宇宙ステーションや人工衛星との衝突リスクが懸念されている。
川崎重工は、2011年から、日本がこれまでに打ち上げたロケットの上段を除去対象とする宇宙ごみ除去技術の開発を推進。2020年度に自社開発の実証衛星を打ち上げ、その衛星に備え付けた画像センサーで対象を捉える技術、対象に実証衛星が自力で接近する技術、実証衛星本体からアームを伸展して対象を把持する技術について実証試験を行い、2025年の宇宙ごみ除去事業の開始を目指す。
今回設置する地上局は、衛星データ送受信用の直径3.7メートルのアンテナおよびテレメータ室(管制室)で構成され、アンテナにヘキサポッド(Hexapod)方式を採用。天頂(真上)方向の軌道の連続追尾を容易としたほか、Sバンド周波数の送受信、Xバンドの受信が可能。また、電波の方向を検出する自動追尾機能を有している。
川崎重工は、これらの地上局機能も活用し、様々な衛星データの解析結果をユーザーに提供したり、同社の既存ビジネスと組み合わせ、宇宙ごみ除去(実証)衛星の運用以外の新たな衛星データ利活用ビジネスを創出していく。
また、様々な衛星データを地域の課題解決に活用する在り方について、岐阜工場の地元である岐阜県各務原市と共同で検討を開始するほか、来年初から市内の小学生を対象に、地上局の見学や衛星通信の模擬体験を含む宇宙教育講座を開催するなど、地域との連携を図る。
川崎重工は、今回の地上局設置を契機として、衛星データ利活用サービス事業の参入に向けた取り組みを推進するとともに、これまで培ってきた宇宙関連技術力を活かし、今後も宇宙ビジネスの発展と安全な宇宙空間の利活用に積極的に貢献していくとしている。
[川崎重工グループの宇宙関連ビジネス]
・H-Ⅱロケットをはじめとする各種ロケットの衛星フェアリング
・国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」のエアロック、環境制御装置
・宇宙ステーションから物資を回収するHTV搭載小型回収カプセルの熱防護系
・火星衛星探査機MMXのサンプリング装置(開発中)
・各種衛星向け伸展機構(当社関連企業 日本飛行機)