川崎重工業は9月7日、ヘリコプターの安全運航に寄与する、VRシミュレータを用いた国内初の「CRM(※1)訓練サービス」を開始したと発表した。
CRM訓練は、操縦士のみではなく、地上員や搭乗員など運航に関わる様々な立場の人を対象とすることで、チームコミュニケーションや状況判断、意思決定能力の向上を目的に、より安全な運航を目指すもの。全国の消防防災航空隊では、ヘリコプターのさらなる安全運航を目的として、今年度から年1回のCRM訓練が義務化された。
川崎重工は今回、VRの空間共有技術を活用し、効果的なCRM訓練を実機訓練よりも低コストで提供できる訓練装置を開発。地上員や搭乗員までを対象とするCRM訓練の提供は国内初の試みとなると云う。なおサービスは、開始後も機能やシステムを定期的にアップグレードされ、幅広いユーザーへの対応が図られるとのこと。
<CRM訓練の流れ>
1.通報が入る。
2.飛行前のブリーフィングをし、現場に向かう。
3.現場にて、要救助者を捜索・救助する。
4.要救助者を病院へ送り届けたり、地上の救急隊へ引き継ぐ。
5.デブリーフィングを行う。
[CRM訓練サービスの主な特長]
・全訓練者(操縦士、副操縦士、搭乗員)が同じVR空間の共有によって、より臨場感のある訓練の実現。
・川崎重工のノウハウを活かした操縦装置と機体模擬プログラムによる実機に近い操縦性。
・現実では訓練が難しい悪天候や夜間飛行、故障模擬をシナリオ化。
・訓練後、各訓練者の視界録画映像および音声による振り返り。
※1:Crew Resource Managementの略称。航空分野で開発された概念で、安全な運航のために利用可能な全てのリソース(人的資源や情報など)を有効活用するという考え方。
※2:ヘリコプターが着陸できない山岳地域や水難救助活動の際、空中停止した状態で、機体に装備しているホイスト(ウインチの一種)先端にフックのついたワイヤーを伸長し、救助員や救助用担架を降下させ救助すること。