一般財団法人日本規格協会( JSA/本部:東京都港区、理事長:朝日弘 )は、2023年12月20日にJIS C 2541:2023( 赤外線カメラによる鉄心表面の損失分布の熱的測定方法/JIS C 2541 )を発行したと( 2024年1月19日 )発表した。
JSA( 日本規格協会 )では、この「 JIS C 2541 」で規定された測定方法の普及が促進されることで、モータの効率向上による省エネが図られ、カーボンニュートラル社会の早期実現が果たされるという。
今回JSAが、「 JIS C 2541 」を発行した理由は、電気自動車( EV )、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車へと電動化が進む自動車産業界に於いて、駆動用モータの高効率化のニーズが高まっていることにある。
そもそも駆動用モータの高効率化には、主要構成部品のモータコアの積層鉄心のエネルギー損失(鉄損)を精密に測定する必要があるが、従来の磁気センサでは精密な測定ができなかった。
そこで新たな測定方法が望まれていたため、今回の赤外線カメラを利用した測定方法によって、従来の磁気センサの100倍の分解能で測定でき、かつ、非接触で測定出来ることから被測定物の形状の制約を受けずに、モータコアの積層鉄心部分で生じる損失のひとつである鉄損を熱的に測定し、損失分布画像とする方法の規格化が開発された。
このJIS C 2541では、装置構成、測定手順、報告事項を規定して、測定原理、測定事例を説明しており、例えば真空チャンバに設置したモータを回転させることで生じるモータコアの損失を、赤外線カメラの熱画像から温度上昇率を算出。比熱を乗算することで損失を測定し、モータコア表面の損失分布を表示できる。
この場合の測定分解能が、従来の磁気センサによる測定の100倍であることから、試料の端部、細部および、非接触で測定することから曲面の測定が可能になるとしている。
より具体的には、モータコア等の積層鉄心(積層電磁鋼帯)の高精度の損失測定が可能になる。例えば下図の測定事例では、損失分布図の赤丸部分に積層鉄心の積層を固定する溶接が施してあり、その影響で透磁率が低下し、ティース両脇に磁束が集中し損失が高くなっていることが判る。
下図の測定事例では、赤丸内に積層コアの固定としてカシメを使用しているが、その部分がカシメによる応力等によって損失が高くなっていることが判る。
つまりJIS C 2541では、従来の磁気測定法と比較すると鉄心表面の損失を測ることにより、モータコアの性能評価・比較が容易に精度よく可能となる。
併せて損失箇所を特定し、改善することでモータコアの損失を低減させ、モータの高効率化へと繋げることができる。今後は同測定方法が広く利用されることで、モータの効率向上による省エネが図られ、カーボンニュートラル社会の実現に寄与すると結んでいる。
一般財団法人 日本規格協会(JSA)
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設立 :1945年(昭和20年)12月6日 商工大臣設立許可
事業内容 :規格開発部門、標準化普及部門