クラウドのスピードと信頼性を活かしてイノベーションを加速
Amazon.com, Inc.傘下のAWS(Amazon Web Services, Inc.)は6月22日、JR東海(東海旅客鉄道)が、次世代のリニア中央新幹線の実験線でAWSの活用を開始したことを明らかにした。
リニア中央新幹線は、超電導リニアにより、時速500キロで東京・名古屋間を最速40 分、東京・大阪間を最速67分で結ぶ次世代の高速鉄道サービス。大規模災害等のリスクへの備えとして、今年で60周年を迎える東海道新幹線に続く、大動脈のバイパスとして建設が進められている。
今回JR東海は、モノのインターネット(IoT)、機械学習、生成AIなどのAWS のサービスを山梨リニア実験線で活用し、保全業務の効率化・省人化を進めることにより業務改革ならびにコスト削減を推進すると共に、データと最先端テクノロジーを活用したリニア中央新幹線のデータドリブンな設備保全を目指す。
東海旅客鉄道の専務執行役員で中央新幹線推進本部 リニア開発本部長を務める寺井元昭氏は、「JR東海では、革新的な交通ソリューションを乗客に提供することに全力を注いでいます。
リニア中央新幹線は、東京と大阪間の移動に革命をもたらすだけでなく、データドリブンな運営を志向し、効率性と安全性の新しい世界標準を確立します。山梨リニア実験線に於いてAWSを活用したイノベーションの加速により、新たな高速鉄道の未来を実現します」と述べている。
機械学習とIoT技術を活用して予知保全や状態監視保全を実施
そんな超電導リニアは、運転士が乗車して列車の速度を制御する方式ではなく、地上から列車を遠隔制御する高精度・高信頼の「自動運転システム」を採用。運行に関わる車両と地上設備の全情報がデータ化され、既に運行システムなどの多くのシステムが連携。車両と地上設備のリアルタイムでの状態監視と機械学習を活用した状態監視保全や予知保全を実現し、高い安全性と快適性を兼ね備え、効率的で省人化された次世代高速鉄道サービスの実現が進められている。
山梨リニア実験線に於いては2024年1月から、AWS IoTサービス等を活用し、リニア車両の走行に不可欠な送電設備や、始発列車走行前に沿線を点検するための電動保守用車の状態データを取得し、状態監視~データ分析までの一連のプロセスを検証する概念実証(PoC)が開始された。
これにより、故障発生時の対応早期化や蓄積データを分析し、故障予兆の検知に活用される。より具体的には、送電設備の異常を識別する機械学習モデルを、あらゆるユースケースで機械学習を実現する完全マネージドサービスであるAmazon SageMakerを利用して、わずか5か月で構築。ビジネスインテリジェンスサービスであるAmazon QuickSight で可視化している。
これにより、重篤な故障に至る前に異常予兆を捉えて保守作業を行えるようになった。今後は、AWS Professional Servicesの支援のもと、IoT化の対象設備やデータの幅を拡大し、機械学習技術を用いた分析のユースケースを拡大していく構えだ。
鉄道サービスの安全で効率的な運営に向けてクラウドの力を活かす
加えて超電導リニアでは、従来の人手による保全から、リアルタイムのデータを用いて、IoT、機械学習などの最新テクノロジーを活用したデータドリブンな保全へと移行が進められている。
今後、生成 AI アプリケーションの構築・拡張を支えるフルマネージドサービスであるAmazon Bedrock を、設備情報や保守作業記録の検索など多様な業務に活用することで、社員の働きやすさの実現にも取り組む。
こうした取組を進めるにあたり、クラウドのスピードと信頼性を活かすデジタル人材育成も加速している。例えば、リニア開発本部では、機械工学等を専門とする社員十数名がAWS Professional Servicesによる機械学習人材育成支援プログラムに参加し、現在も、社員が自ら継続的にこの機械学習モデルを改善する取組が進められている。
アマゾン ウェブ サービス ジャパンで執行役員 技術統括本部長を巨勢泰宏氏は、「高速鉄道サービスで世界をリードするJR東海様は、鉄道サービスのより安全で効率的な運営に向けてクラウドのスピードと信頼性を最大限に活かしています。日本の労働力の変化を自らの進化の切っ掛けとして、ビジネス変革を進めるJR東海様の先駆的な取組に、AWSが貢献できることを嬉しく思います」と未来の大動脈へ関われることを誇らしく結んでいる。