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2024年6月22日【IoT】

JR東海、山梨リニア実験線の保全業務でAWSを活かす

坂上 賢治

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クラウドのスピードと信頼性を活かしてイノベーションを加速

 

Amazon.com, Inc.傘下のAWS(Amazon Web Services, Inc.)は6月22日、JR東海(東海旅客鉄道)が、次世代のリニア中央新幹線の実験線でAWSの活用を開始したことを明らかにした。

 

リニア中央新幹線は、超電導リニアにより、時速500キロで東京・名古屋間を最速40 分、東京・大阪間を最速67分で結ぶ次世代の高速鉄道サービス。大規模災害等のリスクへの備えとして、今年で60周年を迎える東海道新幹線に続く、大動脈のバイパスとして建設が進められている。

 

今回JR東海は、モノのインターネット(IoT)、機械学習、生成AIなどのAWS のサービスを山梨リニア実験線で活用し、保全業務の効率化・省人化を進めることにより業務改革ならびにコスト削減を推進すると共に、データと最先端テクノロジーを活用したリニア中央新幹線のデータドリブンな設備保全を目指す。

 

東海旅客鉄道の専務執行役員で中央新幹線推進本部 リニア開発本部長を務める寺井元昭氏は、「JR東海では、革新的な交通ソリューションを乗客に提供することに全力を注いでいます。

 

リニア中央新幹線は、東京と大阪間の移動に革命をもたらすだけでなく、データドリブンな運営を志向し、効率性と安全性の新しい世界標準を確立します。山梨リニア実験線に於いてAWSを活用したイノベーションの加速により、新たな高速鉄道の未来を実現します」と述べている。

 

機械学習とIoT技術を活用して予知保全や状態監視保全を実施

 

そんな超電導リニアは、運転士が乗車して列車の速度を制御する方式ではなく、地上から列車を遠隔制御する高精度・高信頼の「自動運転システム」を採用。運行に関わる車両と地上設備の全情報がデータ化され、既に運行システムなどの多くのシステムが連携。車両と地上設備のリアルタイムでの状態監視と機械学習を活用した状態監視保全や予知保全を実現し、高い安全性と快適性を兼ね備え、効率的で省人化された次世代高速鉄道サービスの実現が進められている。

 

山梨リニア実験線に於いては2024年1月から、AWS IoTサービス等を活用し、リニア車両の走行に不可欠な送電設備や、始発列車走行前に沿線を点検するための電動保守用車の状態データを取得し、状態監視~データ分析までの一連のプロセスを検証する概念実証(PoC)が開始された。

 

これにより、故障発生時の対応早期化や蓄積データを分析し、故障予兆の検知に活用される。より具体的には、送電設備の異常を識別する機械学習モデルを、あらゆるユースケースで機械学習を実現する完全マネージドサービスであるAmazon SageMakerを利用して、わずか5か月で構築。ビジネスインテリジェンスサービスであるAmazon QuickSight で可視化している。

 

これにより、重篤な故障に至る前に異常予兆を捉えて保守作業を行えるようになった。今後は、AWS Professional Servicesの支援のもと、IoT化の対象設備やデータの幅を拡大し、機械学習技術を用いた分析のユースケースを拡大していく構えだ。

 

鉄道サービスの安全で効率的な運営に向けてクラウドの力を活かす

 

加えて超電導リニアでは、従来の人手による保全から、リアルタイムのデータを用いて、IoT、機械学習などの最新テクノロジーを活用したデータドリブンな保全へと移行が進められている。

 

今後、生成 AI アプリケーションの構築・拡張を支えるフルマネージドサービスであるAmazon Bedrock を、設備情報や保守作業記録の検索など多様な業務に活用することで、社員の働きやすさの実現にも取り組む。

 

こうした取組を進めるにあたり、クラウドのスピードと信頼性を活かすデジタル人材育成も加速している。例えば、リニア開発本部では、機械工学等を専門とする社員十数名がAWS Professional Servicesによる機械学習人材育成支援プログラムに参加し、現在も、社員が自ら継続的にこの機械学習モデルを改善する取組が進められている。

 

アマゾン ウェブ サービス ジャパンで執行役員 技術統括本部長を巨勢泰宏氏は、「高速鉄道サービスで世界をリードするJR東海様は、鉄道サービスのより安全で効率的な運営に向けてクラウドのスピードと信頼性を最大限に活かしています。日本の労働力の変化を自らの進化の切っ掛けとして、ビジネス変革を進めるJR東海様の先駆的な取組に、AWSが貢献できることを嬉しく思います」と未来の大動脈へ関われることを誇らしく結んでいる。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

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経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。