国際的な技術網を拡大して電動化、AI、自律走行プログラムを加速へ
タタ・サンズ傘下で、タタ・モーターズ・リミテッドの100%子会社JLR( ジャガー・ランドローバー )は10月23日( 英国ゲイドン発 )、最新のオープンイノベーションハブのJLRテクノロジー&ビジネスサービスインディア( TBSI )をインド国内に開設することを発表した。このハブではスタートアップ企業を特定して緊密に連携。将来の顧客体験を形づくる次世代の製品やサービスを開発していく。
このJLR TBSIは、インドのベンガル―ルゥに拠点を置くケイパビリティハブで、JLR並びに傘下のRANGE ROVER、DEFENDER、DISCOVERY、JAGUARの4ブランドの成長を支える。同ハブ拠点では800人の従業員がADAS、ソフトウェア・デファインド・ビークル、エンジニアリング推進、ボディ、シャーシ&外装、デジタルオペレーション、グローバル調達、アフターマーケット機能などの様々な分野に注力している。
ちなみにインドの大手IT業界団体「National Association of Software and Service Companies (Nasscom)」と、世界的な経営コンサルティング会社「Zinnov」による調査機関「Nasscom-Zinnov」によるとインド国内は、スタートアップ企業の拠点として世界のトップ10にランクインしており、ディープテクノロジーエコシステムの世界ランキングでは第6位。インド国内のディープテクノロジースタートアップ企業は合計3,600社に上り、このうち480社以上は2023年に設立されたもので、その規模は2022年の倍となっている。
上記を踏まえJLRは、英国、米国、イスラエル、ブラジルでのイノベーションハブ開設の成功に基づきインド国内に於けるJLR TBSIでは、人工知能(AI)、ビッグデータと分析、IoT、ADAS(先進ドライバー支援システム)、センサーとデバイスなどのディープテックに注力する。
自社5拠点目のハブ施設は「Plug and Play」との連携を介して開設へ
なおJLR TBSIは、企業のイノベーションプラットフォームであり投資家でもあるプラグアンドプレイテックセンター( PNP / Plug and Play Tech Center )と連携して開設したもので、その活動例としては、電気自動車パワートレインのバッテリーの最適化、充電インフラの最適地の特定、高度なADASの提供などについて産官学を筆頭に様々な参加者を募り、革新的なソリューションを議論し開発を担うことになる。
JLR TBSI開設で連携パートナーを担うプラグアンドプレイテックセンターとは、米カリフォルニア州サニーベルに本社を置くベンチャーキャピタル企業だ。創業者でCEOのサイード・アミディ氏( Saeed Amidi )は、 1979年のイラン革命から逃れるために米国入り。
当初、アミディ氏は製造業としてのアミディ・グループを設立。2006年に投資収益を基にベンチャーキャピタル企業のプラグアンドプレイテックセンターを設立。以降、スタートアップ企業、ベンチャーキャピタル、大学、政府機関を結びつける役割を担ってきた。そんなプラグアンドプレイテックセンターは5億ドルの運用資金を背景に現在、世界5大陸に60か所以上の拠点を持っている。
その活動は、企業向けのイノベーションプログラムを提供することを介してパートナー企業を支援していく。またスタートアップアクセラレーションプログラムを企画し、社内VCを構築して複数の業界でイノベーションを推進してもいる。実際、これまでDropbox、Guardant Health、Honey、Lending Club、N26、PayPal、Rappiなど、数百の企業に投資してきた。
インドの拠点はタタとの密接な繋がりもあり理想的なハブになっていく
ちなみに今回、JLRが新たに設けたハブ拠点は、2022年4月の初開設以来、5拠点目のハブとなる。このプログラムには世界で2,500社以上のスタートアップ企業が参加。これまでに33の正式なコラボレーションが生まれた。下記はその成功例となる。
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- 英国のスタートアップAllyeとともにJLRのPHEVとBEVのバッテリーを二次電池蓄電システムとしてリユースする方法を開発
- ブラジルで、スタートアップのEnergy Sourceが初の太陽光発電による電気自動車充電ステーションを立ち上げ、レンタカー専門のMovidaが、JLRブランドの250台以上にリースオプションを提供。JLRはベンチャーキャピタル部門であるInMotion Venturesを通じてEnergy Sourceに投資した。
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インドに於ける新たなイノベーションバブの開設についてJLRのイノベーション・ディレクターのイゴール・ムラカミ氏( Igor Murakami )は、「急成長するインドのスタートアップ企業、JLRの確立された存在感、更にタタ・グループとの密接なつ繋がりによって、この地は新たなイノベーションハブの理想的な場所となっています。
グローバルコラボレーションを通じて、JLRのオープンイノベーションプログラムは私たちと次世代の才能ある人材や技術を繋ぎます。インドに於けるハブ拠点の開設はJLRのエンジニアチームが迅速に革新を推し進め、車両デザインや機能、顧客体験を向上させるための大きな助けとなるでしょう」と述べた。
JLR TBSIはスタートアップ企業にとっても最高のパートナーに
併せてJLRテクノロジー&ビジネスサービスインディア(TBSI)のCEOを務めるラリタ・インドラカンティ氏(Lalitha Indrakanti)は、「品質とイノベーションは、私たちのビジネスに置いて核心となるものです。イノベーションハブを通して、インドのディープテクノロジーエコシステムを活用し、エンジニアリングと持続可能性にフォーカスした新たな可能性を見出します。
このハブは、有意義で拡張可能なソリューションを生む革新者を惹きつけるための特別な場として機能します。私たちは、モビリティと持続可能性に於けるリーディングイノベーションハブとなり、スタートアップ企業にとって最高のパートナーになることを目指しています」と語っている。
加えてプラグアンドプレイテックセンターでパートナーを務めるソブハン・カーニ氏(Sobhan Khani)は、「プラグアンドプレイとJLRのパートナーシップは、グローバルなモビリティ・エコシステムを強化していきます。
このイニシアチブにより、イノベーターはモビリティの未来を再定義し、卓越した顧客体験を提供するという JLR のコミットメントに沿って、革新的なテクノロジーを開発するイノベーターを支援できるようになります」と結んでいる。