NEXT MOBILITY

MENU

2024年10月31日【CASE】

JLR、5拠点目のオープンイノベーションハブをインドで開設

坂上 賢治

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 

国際的な技術網を拡大して電動化、AI、自律走行プログラムを加速へ

 

タタ・サンズ傘下で、タタ・モーターズ・リミテッドの100%子会社JLR( ジャガー・ランドローバー )は10月23日( 英国ゲイドン発 )、最新のオープンイノベーションハブのJLRテクノロジー&ビジネスサービスインディア( TBSI )をインド国内に開設することを発表した。このハブではスタートアップ企業を特定して緊密に連携。将来の顧客体験を形づくる次世代の製品やサービスを開発していく。

 

このJLR TBSIは、インドのベンガル―ルゥに拠点を置くケイパビリティハブで、JLR並びに傘下のRANGE ROVER、DEFENDER、DISCOVERY、JAGUARの4ブランドの成長を支える。同ハブ拠点では800人の従業員がADAS、ソフトウェア・デファインド・ビークル、エンジニアリング推進、ボディ、シャーシ&外装、デジタルオペレーション、グローバル調達、アフターマーケット機能などの様々な分野に注力している。

 

ちなみにインドの大手IT業界団体「National Association of Software and Service Companies (Nasscom)」と、世界的な経営コンサルティング会社「Zinnov」による調査機関「Nasscom-Zinnov」によるとインド国内は、スタートアップ企業の拠点として世界のトップ10にランクインしており、ディープテクノロジーエコシステムの世界ランキングでは第6位。インド国内のディープテクノロジースタートアップ企業は合計3,600社に上り、このうち480社以上は2023年に設立されたもので、その規模は2022年の倍となっている。

 

上記を踏まえJLRは、英国、米国、イスラエル、ブラジルでのイノベーションハブ開設の成功に基づきインド国内に於けるJLR TBSIでは、人工知能(AI)、ビッグデータと分析、IoT、ADAS(先進ドライバー支援システム)、センサーとデバイスなどのディープテックに注力する。

 

 

自社5拠点目のハブ施設は「Plug and Play」との連携を介して開設へ

 

なおJLR TBSIは、企業のイノベーションプラットフォームであり投資家でもあるプラグアンドプレイテックセンター( PNP / Plug and Play Tech Center )と連携して開設したもので、その活動例としては、電気自動車パワートレインのバッテリーの最適化、充電インフラの最適地の特定、高度なADASの提供などについて産官学を筆頭に様々な参加者を募り、革新的なソリューションを議論し開発を担うことになる。

 

 

JLR TBSI開設で連携パートナーを担うプラグアンドプレイテックセンターとは、米カリフォルニア州サニーベルに本社を置くベンチャーキャピタル企業だ。創業者でCEOのサイード・アミディ氏( Saeed Amidi )は、 1979年のイラン革命から逃れるために米国入り。

 

当初、アミディ氏は製造業としてのアミディ・グループを設立。2006年に投資収益を基にベンチャーキャピタル企業のプラグアンドプレイテックセンターを設立。以降、スタートアップ企業、ベンチャーキャピタル、大学、政府機関を結びつける役割を担ってきた。そんなプラグアンドプレイテックセンターは5億ドルの運用資金を背景に現在、世界5大陸に60か所以上の拠点を持っている。

 

その活動は、企業向けのイノベーションプログラムを提供することを介してパートナー企業を支援していく。またスタートアップアクセラレーションプログラムを企画し、社内VCを構築して複数の業界でイノベーションを推進してもいる。実際、これまでDropbox、Guardant Health、Honey、Lending Club、N26、PayPal、Rappiなど、数百の企業に投資してきた。

 

インドの拠点はタタとの密接な繋がりもあり理想的なハブになっていく

 

ちなみに今回、JLRが新たに設けたハブ拠点は、2022年4月の初開設以来、5拠点目のハブとなる。このプログラムには世界で2,500社以上のスタートアップ企業が参加。これまでに33の正式なコラボレーションが生まれた。下記はその成功例となる。

 

————————————————

 

  • 英国のスタートアップAllyeとともにJLRのPHEVとBEVのバッテリーを二次電池蓄電システムとしてリユースする方法を開発

 

  • ブラジルで、スタートアップのEnergy Sourceが初の太陽光発電による電気自動車充電ステーションを立ち上げ、レンタカー専門のMovidaが、JLRブランドの250台以上にリースオプションを提供。JLRはベンチャーキャピタル部門であるInMotion Venturesを通じてEnergy Sourceに投資した。

 

————————————————

 

インドに於ける新たなイノベーションバブの開設についてJLRのイノベーション・ディレクターのイゴール・ムラカミ氏( Igor Murakami )は、「急成長するインドのスタートアップ企業、JLRの確立された存在感、更にタタ・グループとの密接なつ繋がりによって、この地は新たなイノベーションハブの理想的な場所となっています。

 

グローバルコラボレーションを通じて、JLRのオープンイノベーションプログラムは私たちと次世代の才能ある人材や技術を繋ぎます。インドに於けるハブ拠点の開設はJLRのエンジニアチームが迅速に革新を推し進め、車両デザインや機能、顧客体験を向上させるための大きな助けとなるでしょう」と述べた。

 

JLR TBSIはスタートアップ企業にとっても最高のパートナーに

 

併せてJLRテクノロジー&ビジネスサービスインディア(TBSI)のCEOを務めるラリタ・インドラカンティ氏(Lalitha Indrakanti)は、「品質とイノベーションは、私たちのビジネスに置いて核心となるものです。イノベーションハブを通して、インドのディープテクノロジーエコシステムを活用し、エンジニアリングと持続可能性にフォーカスした新たな可能性を見出します。

 

このハブは、有意義で拡張可能なソリューションを生む革新者を惹きつけるための特別な場として機能します。私たちは、モビリティと持続可能性に於けるリーディングイノベーションハブとなり、スタートアップ企業にとって最高のパートナーになることを目指しています」と語っている。

 

加えてプラグアンドプレイテックセンターでパートナーを務めるソブハン・カーニ氏(Sobhan Khani)は、「プラグアンドプレイとJLRのパートナーシップは、グローバルなモビリティ・エコシステムを強化していきます。

 

このイニシアチブにより、イノベーターはモビリティの未来を再定義し、卓越した顧客体験を提供するという JLR のコミットメントに沿って、革新的なテクノロジーを開発するイノベーターを支援できるようになります」と結んでいる。

CLOSE

坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。