いすゞ「新型エルフ」
部品形状最適化および接合位置最適化をトラックキャブに初適用
JFEスチールは8月22日、自社のJFEトポロジー最適化技術が、いすゞ自動車の「新型エルフ」の乗車部分であるキャブ設計手法として採用されたことを発表した。
両社は共同でキャブの構造最適化に取り組み、JFEトポロジー最適化技術を用いた設計により、室内空間の最大化と車体の軽量化の両立を達成した。
この技術はこれまで、普通乗用車や軽自動車に採用されてきたが、トラックのような商用小型貨物車への採用は今回が初となる。
自動車業界に於いては、地球環境への配慮からCO2排出量削減や燃費向上を目的とした車体軽量化のニーズが高まっている。しかし部品に使用される鋼鈑の厚みが薄くなると剛性( 車体の変形のし難さを示す指標 )や衝突強度などの性能が低下する。このため必要な性能を維持しつつの軽量化は容易ではない。
最適化の適用部位(トラックのキャブ)
そこでJFEスチールでは、ハイテンなどの薄くても高強度で高機能な鋼板を提供すると共に、設計手法によって自動車の性能を維持しつつ、軽量化を可能とする技術開発を行ってきた。今回のJFEトポロジー最適化技術は、そうした技術の一つで、部品の形状および接合位置の最適化に貢献するもの。
また一般的に、自動車の車体は薄鋼板からなる数百もの部品を数千のスポット接合で繋いで構成されており、変形時の荷重は多くの部品とスポット接合を伝達していく中で流れが複雑に変化していく。
このため、剛性などの性能に優れ、軽量化が可能な部品を設計するためには設計者の経験と試行錯誤が必要となる。より具体的には車体の複雑な荷重伝達を考慮できる高精度な車体設計方法が求めらる。
こうした際、トポロジー最適化は、与えられた設計空間から、要求される性能に必要な部分を残存させ、最も効率のよいレイアウトを求めることができる解析方法となる。
但し一般的なトポロジー最適化では、部品単体ごとに最適化を行うため、数百もの部品の間の複雑な荷重の流れを車体構造に反映するのは困難を極める。一方で、JFEトポロジー最適化技術では、設計空間を車体の一部として組み込んで解析すると共に、スポット接合自体を設計空間として扱うことで、車体各部への荷重伝達を車体構造に正確に反映でき、高精度な解析が可能となる。
今回、いすゞの新型エルフのフルモデルチェンジでは、居住性を向上させるために室内空間を最大限広げる一方で、車体を軽量化するため、JFEトポロジー最適化技術を採用。両社が協業で主要骨格の新設計を実施した。
こうして新部品形状の設計および、高効率接合位置の検出のために、トポロジー最適化からなるCAE技術( Computer Aided Engineering/コンピュータシミュレーションを用いた設計支援 )を駆使した結果、前モデルに対し大幅な軽量化を達成できた。
JFEスチールの自動車向け総合ソリューション〝JESOLVA™〟
なお同成果については、いすゞより今年7月の自動車技術会フォーラム「車体の最新技術2023」にて発表されている。
これを踏まえJFEスチールは、「高強度鋼板の開発・製造だけでなく、顧客企業の工程の省力化や商品の性能向上に資するソリューションを提供するため、自動車用鋼板の利用技術を〝JESOLVA®〟として体系化。
自動車の設計段階から技術的に協力し合うEVI( Early Vendor Involvement/新型車開発の設計初期段階で、新型車のコンセプトに合わせた鋼材使用・部材加工方法やパフォーマンス評価等を提案する )活動を積極展開している。
今後も顧客ニーズに合った様々な製品と利用技術を開発・提案し、自動車車体の軽量化によるCO2排出量削減と高性能化に寄与していくことで、持続可能な社会の実現に貢献していく」と話している。