本田技研工業(ホンダ)は11月17日、車両周辺の死角をカバーし、交通事故の回避や、ドライバーの運転負荷の軽減をサポートする全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360+(ホンダ・センシング・サンロクマル・プラス)」を発表した。
このHonda SENSINGとは、車両を取り巻くリアルな外界環境を認識する技術をベースに、安全運転支援を行うために開発された同社が謳う独自の安全システムの総称であり概念。具体的には、クルマの前方・側方・後方の状況を認識し、安全・快適な運転や事故回避を支援するもの。
今回の「Honda SENSING 360+」より前に披露されていた「Honda SENSING 360」は、2022年に中国で販売されたCR-Vから搭載される全方位安全運転支援システムが参考になる。
「Honda SENSING 360」は、フロントと各コーナーに計5台のミリ波レーダーを装備することで360度センシングを実現。目視確認が難しかった車両周辺の死角をカバーすることで、ドライバーが必ず行うべき目視確認を冗長的にサポート。他の車両や歩行者との衝突回避や運転に伴うドライバーの運転負荷を軽減させることを特徴としていた。
これに対して今回発表された「Honda SENSING 360+」では、上記の機能に加えて、新たにドライバーモニタリングカメラと高精度地図の組み合わせを採用。その結果、ドライバーの状態確認や車両の制御機能を向上させている。
より具体的には、ドライバーの健康起因による見落としや、人間による運転であるゆえについてまわるヒューマンエラーで発生してしまう事故を、先と同じくドライバーによる目視確認を冗長的にサポートし車両の動きを抑制する仕組みだ。
なお、この新たなシステムは、2024年に中国の「ACCORD(アコード)」から適用を開始。その後、グローバルでの展開を予定している。
Honda SENSING 360+の主な特長は以下の通り
1.ハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能
・高速道路や自動車専用道を走行中に、システムがアクセル、ブレーキ、ステアリングを操作し、ドライバーがハンドルから手を離しても(ハンズオフ)、車速や車線内の走行を維持できるよう支援。ドライバーの運転負荷を軽減する。
・高精度地図、GNSS(全球測位衛星システム/Global Navigation Satellite System/衛星測位システムの総称)を活用し、自車の位置を特定。
先行車がいない場合のハンズオフでは、設定した車速を保ちながら車線の中央を維持するように走行する。
一方で先行車がいる場合には、適切な車間距離を保って追従する。また、カーブでは曲率を前もって読み取り、曲率に応じた加減速を行い、安心して運転できるように支援する。
2.レコメンド型車線変更支援機能
・ハンズオフ機能付高度車線内運転支援機能で高速道路や自動車専用道を走行中に、自車より車速の遅い先行車を検知すると、一定の条件下でシステムが周囲の状況を判断する。
例えば追い越し可能と判断した場合、ドライバーに通知した上で、ドライバーが手元のスイッチで追い越しを承認すると、ウィンカー操作や加減速、ステアリング操作を行い、追い越しや車線復帰を支援する。
・更に経路誘導モードでは、ナビの経路案内に基づき、目的地に向かうための車線変更を提案。ドライバーの承認が得られると、システムが自動的に分岐進入、退出までの一連の車線変更を行う。
3.カーブ路外逸脱早期警報
・高速道路や自動車専用道でカーブを走行する際に、システムが即座に減速をしないと事故のリスクがあると判断した場合、警告や減速支援を行い、カーブ路外逸脱事故の発生を抑制する。
(1)高い速度でカーブに進入する際に、メーターに「前方カーブ注意」と表示。早期にドライバーに認知を促す。
(2)カーブに近づき、減速が求められるタイミングになると、警告音とヘッドアップディスプレーでの点滅表示により、ドライバーに減速を促す警告を行う。
(3)さらにカーブに近づき、即座に減速が必要な場合は、より強く警告すると共にシステムが減速を行うことで、カーブ路外逸脱事故の発生を抑制する。
4.降車時車両接近警報
・駐停車中、後側方に接近する車両を検知すると、フロントピラーもしくはサイドミラー上のインジケーターを点灯させ、認知を支援。
更に乗員が開けようとしたドアが通過する車両と衝突するおそれがある場合には、インジケーターを点滅させると同時に警報音で注意を喚起する。
5.ドライバー異常時対応システム
・走行中にドライバーの体調急変などにより、運転を継続できなくなった場合、同一車線での減速・停車を支援する。
(1)ドライバーがシステムからの操作要求に応じなかった場合、段階的に警告音を強めていき、ドライバーが操作要求に応じるように促す。
(2)それでも応じなかった場合は、ハザードランプとホーンで周囲に注意喚起をしながら、同一車線での減速・停車を支援する。
(3)更に緊急通報サービス(HELPNET/利用にはアプリのダウンロードが必要)でコールセンターへ接続し、ドライバーや同乗者、周囲の交通参加者の安全を確保する。
ホンダが説明する自社の「安全運転支援技術への取り組み」は以下の通り
ホンダでは、道を使う誰もが事故に遭わない社会の実現を目指し「Safety for Everyone」のスローガンの下、2050年に全世界で同社の二輪車、四輪車が関与する交通事故の死者をゼロにするという高い目標を掲げ、ハード・ソフトの両面で安全技術の研究開発に取り組んでいる。
ホンダによると現在は、量産車で展開する安全運転支援システム「Honda SENSING」は、2014年の誕生以来、その機能を進化させながらグローバルでの適用を拡大。
そうした最先端の技術の搭載については、2021年に自動運転レベル3に適合するトラフィックジャムパイロット(渋滞運転機能)を搭載した「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」を「LEGEND(レジェンド)」に搭載して発売した。
その他に、2022年にはこの技術開発で培われた知見を活かした全方位安全運転支援システム「Honda SENSING 360」の展開を開始し、更なる安全・安心を提供すべく機能進化を続けていると説明する。
加えて今後も、二輪車と四輪車を手掛ける自社ならではの強みを安全技術の研究開発に活かし、“事故に遭わない社会”の実現をリードし続けるべく、真摯に取り組んでいくと結んでいる。