富士通研究所と富士通は、共同で開発したメモリ拡張技術「MMGIC」(注1)の実証実験を、印・Sify Technologies(Sify/注2)のデータセンターで行い、サーバに同技術を適用することで、1台あたりサーバ10台分と同等の性能を出すことに成功したと、9月19日に発表した。
その結果、技術適用のサーバを含むシステム全体で比較した際、性能が最大約3.6倍に。
これを受け両社は、サーバ上のメモリでデータを処理することで高速な応答性能を実現するインメモリシステムの処理をさらに向上できることが実証されたとし、今後、製品への適用を進めていく。
近年、企業が扱うデータ量が急激に増大し、大容量データを高速に処理したいという需要が高まっている。
サーバ上のメモリ(DRAM)にデータを格納し、高速な処理を実現するインメモリシステムでは、サーバ1台あたりに搭載できる物理メモリ容量が限られるため、大容量データを処理する場合、すべてのデータがメモリに乗り切らずに性能が大きく低下すると云う課題があった。
この課題に対し、富士通研究所と富士通は、フラッシュメモリを活用して、メモリ量を仮想的に大きくできるメモリ拡張技術「MMGIC」を2015年11月に開発。
今回、富士通と2015年より戦略的パートナーシップを結んでいるSifyのデータセンターで本技術の実証実験を行い、その有用性を確認した。
注1)メモリ拡張技術:「ビッグデータ処理に最適なソフトウェア制御型SSDを開発」 (2015/11/19プレスリリース):http://pr.fujitsu.com/jp/news/2015/11/19.html
注2) Sify Technologies:1日当たりのPV数約118万を有するインド有数のポータルサイトを運営。
[実証実験の概要]
<期間>
2017年8月~2018年6月
<内容>
Sifyが運営するインド国内の一般向けポータルサイト「sify.com」を構成するWebシステムの中で、コンテンツ配信を快適に行うために、特にレスポンスが重視され、インメモリ処理の需要が高いキャッシュサーバで実証実験を実施。
今回、3テラバイトのデータを扱うキャッシュサーバ(富士通のPCサーバ「FUJITSU Server PRIMERGY」で構築)10台のうち1台に対して、メモリ拡張技術を適用した。
「sify.com」で実際に使われているデータとアクセスパターンを用いて、キャッシュサーバのメモリがDRAM(256ギガバイト)のみの場合と、「MMGIC」のフラッシュメモリ(2.5テラバイト)で拡張した場合を、キャッシュサーバおよびWebシステムの性能で比較した(図1)。
<効果>
キャッシュサーバに搭載されているDRAMを物理的に増やすことなく、フラッシュメモリを仮想的にメモリとして活用する「MMGIC」の適用により、性能劣化なくサーバ10台分の性能を1台で達成した。
これにより、システム全体の処理能力が向上し、Webシステム性能が3.6倍になることを確認した(図2)。
<適用技術>
1.メモリ拡張技術「MMGIC」(2015年11月プレスリリース発表)
SSD内にハードウェアとして搭載され、ブラックボックス化されているコントローラをソフトウェアに実装することで、サーバのアプリケーションからSSD内のフラッシュメモリを直接扱えるようにする。
2.「MMGIC」に最適化したキャッシュシステム(2017年3月論文発表)
高速小容量(DRAM)と低速大容量(MMGIC)の2種類のメモリ空間を構築し、頻繁にアクセスされるデータを高速メモリ、アクセス頻度の低いデータを低速メモリに配置するメモリ制御技術を活用。
今回、高頻度にアクセスされるデータをDRAMに配置し、それ以外を「MMGIC」のメモリ空間に配置することで、性能と容量を両立するキャッシュシステムを実現した(図3)。
[今後]
富士通研究所と富士通は、同技術により、インメモリ処理の需要が高いシステムにおいて、すべての処理データを大容量仮想メモリ上に置けるため、システム全体の高速化が期待されるとし、今後、本技術の精度をさらに検証し、将来的な製品化を進めていくとしている。