富士通は、理化学研究所(理研)と共同開発したスーパーコンピュータ「富岳」の出荷を12月2日から開始。富士通ITプロダクツで製造したコンピュータラックを、兵庫県神戸市にある理研の計算科学研究センターに納入する。
出荷される第一号機は、高性能CPU15万個以上を接続して構成するスーパーコンピュータシステムである富岳を成すコンピュータラックのひとつ。富士通は今後、2021年から2022年頃の共用開始に向け、順次富岳の出荷および設置と調整を行っていく。
富岳は、富士通がArm命令セットアーキテクチャーを採用し、開発した高性能CPU「A64FX(注1)」15万個以上を高速ネットワーク「TofuインターコネクトD(注2)」で接続する超大規模システムで、「京」と比較し、最大100倍のアプリケーション実効性能を、約3倍程度の消費電力で実現することを目指し、開発された。
なお、そのプロトタイプは、11月17日から11月22日まで米国デンバーで開催されたハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)に関する国際会議「SC19」において、優れた消費電力性能を示すGreen500で世界1位を獲得(注3)している。
富士通はまた、富岳の技術を活用した商用スーパーコンピュータ「FUJITSU Supercomputer PRIMEHPC FX1000」および「PRIMEHPC FX700」をグローバルに提供。
新薬の開発、防災・減災などの安心安全な社会の実現など、社会的課題の解決や最先端研究の推進をするとともに、様々な業種に幅広く提供し、DX分野への応用、企業競争力の強化に貢献していくとしている。
注1)高性能CPU「A64FX」:世界で初めてArm社のArmv8-A命令セットアーキテクチャーをスーパーコンピュータ向けに拡張した「SVE (Scalable Vector Extension)」を採用したCPU。高い電力あたり性能を実現。また、高性能積層メモリ・HBM2の採用で、高いメモリバンド幅を実現するとともに、ディープラーニングなどで重要な半精度演算および整数内積演算にも対応できる。
注2)TofuインターコネクトD:ノード間を低遅延、高バンド幅(リンク当たり6.8 GB/s)で直接接続するネットワーク。6次元メッシュ・トーラス接続で最大約39万ノードの大規模システムを構築可能。スーパーコンピュータ「京」向けに開発した「Tofuインターコネクト」の機能を向上させて開発した。
注3)Green500で世界1位を獲得:「SC19」において11月18日に発表された。Green500は、世界中のコンピュータシステムを計算処理速度の速い順に上位500位までランク付けしたリストであるTOP500にランクインしたスーパーコンピュータの中で、少ない消費電力で効率的に計算できた順にランク付けしたもの。受賞したシステムは、受賞時の性能測定では、ピーク性能の2.3593PFLOPS(ペタフロップス)に対し、連立一次方程式を解く計算速度(LINPACK)で1.9995PFLOPS、消費電力1ワットあたりの性能で16.876 GFLOPS/W(ギガフロップスパーワット)を達成した。