自動車業界向けのコネクテッドソフトウェア製品を提供するエレクトロビット(EB)は10月30日(ドイツ・エアランゲン発)、オープンソースコミュニティのダイナミズムを取り込むべく、AUTOSAR準拠のベーシックソフトウェアEB tresos AutoCoreの実装に於いて生産性とサイバーセキュリティの強靭性を向上させるプログラミング言語「Rust」のトップレベルサポートの提供を開始した。これによりASIL-Dの機能的安全性に準拠しながら、サイバーセキュリティの強化が可能になる。
これは、ECUプロジェクトに於いてRustの評価の加速と新たな製品機能の活用と専門知識を提供するものであり、エレクトロビットのコミットメントである「Cloud to cockpit(クラウドからコックピットまで)」を示している。
より具体的には、開発者の間でRustがますます普及、評価、支持されるようになる中で同社は、EB tresosがRustでのアプリケーションソフトウェアコンポーネントの統合に対応していることを確認。これを踏まえC言語とRust言語両方に対応したAUTOSARアプリケーションSWCのシームレスな統合と、開発者向けの使い易い言語バインディングを提供する。
上記を踏まえて製品ラインの一部としてRustのトップレベルのサポートを整備。これには慣用的なコードの生成も含まれ、より容易かつ迅速な開発を可能にする手段も含まれる。結果、より安全でセキュアなアプリケーションが実現できたことになる。
またビルドシステムでは、Rustの静的コード解析ツール 「Clippy」をサポートしており、開発者がすぐに効率的に作業を開始できるよう、使用言語に応じたアプリケーションをビルドすることができる。
そもそも、もはやサイバーセキュリティはIT業界の流行語ではない。UN規則155やEUサイバーレジリエンス法は、サイバーセキュリティの重要性に対する認識が高まっていることを示しているし、政府機関は、「メモリが安全でないプログラミング言語 」を使用しないよう業界に対して強く求めている。
複数の研究によれば、脆弱性の約70%が 「メモリの安全性の問題 」に起因することを示している。これは自動車がより多くのソフトウェア機能を実装し、インターネットのオンラインサービスが普及するソフトウェア定義型モビリティの時代に置いて、明らかに重要な意味を持つ。
絶対性能、メモリ安全性、安全な並行性を目指して設計されたマルチパラダイムのプログラミング言語Rustは、C言語、C++に代わるシステムプログラミング言語を目指して2006年に始動。2015年にはバージョン1.0がリリースされ、メモリ安全性の問題、コードの正確性、プログラミングの生産性に取り組むと同時に、ハードウェアのコストの安定を維持してきた。というのは既存のCコードと新しいRustコードを組み合わせることが可能なため、既存のコードベースを拡張するための理想的な選択肢となっているからだ。
エレクトロビットのシニアエキスパートであるFlorian Bartels氏は、「Rustを使用することで、我々のチームの生産性は大幅に向上し、同時に、Rustのcorrect-by-design(正確性を重視した設計)アプローチにより品質が向上しています。機能安全を背景に依然として人気のあるCプログラミング言語と比較しても、Rustには半世紀にわたる教訓が取り入れられています」と述べた。
加えてFerrous Systemのマネージングディレクターで創立者でもあるFlorian Gilcher氏は、「エレクトロビットが、オープンソースでISO 26262認証済のRustコンパイラツールチェーンであるFerroceneを採用し、EB tresos上でClassic AUTOSARのメモリセーフプログラミングを実現したことを嬉しく思います。
Ferroceneは、Rustのバグを排除する特性を活用することで安全規格への準拠を確保しており、開発者は機能に集中できるようになります。このソリューションは、より安全で信頼性の高いクルマを実現するプログラミングイノベーションの重要なステップです」と語っている。
なお、このソリューションには、コードの自動生成、Rustコードのコンパイル、静的解析が含まれ、エラー処理を簡素化し、自動車分野とそれ以外の分野向けのOSとミドルウェアのサポートも提供される。
EB tresos AutoCoreは、Rustコードのネイティブサポートを提供し、シームレスな統合と、より耐障害性の高いコード作成を可能にする。Rustコンパイラがコンパイル時に問題を検出し、(Rustの「unsafe」キーワードを使用する場合でも)自動チェックが難しいコード量を抑えることで、コード構築コストの削減、市場投入までの時間短縮、脆弱性が残るリスクの低減も実現する。
今回のサポートにあたりエレクトロビットは、実践型のセッションでより詳しい背景情報を説明する導入ガイドを提供する。この有料ワークショップは、今後のECU開発に於いてRustを評価できるよう、知識、実践事例、新製品の機能説明を組み合わせて構成・提供される。そんなEB tresosの詳細とエレクロビットのRust採用については、右記URLを参照されたい。 https://www.elektrobit.com/jp/products/ecu/eb-tresos/bsw/