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2023年6月14日【ソフトウェア】

童夢、大型風洞設備を一般向けにも提供開始

坂上 賢治

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童夢(滋賀県米原市梅ヶ原2462番地)は6月14日、競技用自転車の計測システムを開発したことを契機に、自転車本体のみならず選手が乗車状態のままでも各種空力解析を行う環境として”風流舎”を新たに設けた。

 

 

まずは競技用自転車向けとして昨年4月より試験を重ねた結果、自転車本体のみならず、選手が乗車状態のままでも各種空力解析を行う環境を新たに設けるなどの改良を重ねた。

 

ちなみにこの”風流舎”とは、これまでF1グランプリカーやル・マン24時間用スポーツカーなど、トップクラスのレーシングカー開発に用いられてきた風洞実験施設のノウハウをベースに、2000年に同社が建設した当時世界最大級の50%スケールモデル用ムービングベルトを備えたゲッチン式風洞実験施設を指す。

 

 

今やこうした風洞実験施設は、コンピュータ空力解析と併せて、航空宇宙系やレーシングカーの開発のみならず、建築をはじめとする社会インフラ施設はもちろん、空気が関わる様々な分野で活用されるに至っている。

 

また近年ではスキージャンプや滑降、ボブスレーなどのオリンピック競技の世界でも、選手の姿勢改善を含むトレーニングや用具類の改良のため空力解析の重要性が認識されるようになった。

 

 

そうした中でも特に自転車競技は、自転車本体、選手の姿勢、ヘルメットを始めとする着用品などの空力特性が競技に大きく影響を及ぼすことが知られており、欧米では風洞実験施設を用いた計測及びトレーニングは常識となっている。

 

日本でも近年では、自転車選手が同様の計測を行うようになってきているが、残念ながら国内には自転車競技のトレー二ングに使える風洞実験施設が不足しており、国立科学スポーツセンターには直接選手が風洞内に入って空力特性を測定できる風洞実験設備が設置されてはいるものの、より精密測定可能な施設が求められていたことが、童夢に於いて本格的な施設検討の切っ掛けになったのだという。

 

 

そうした経緯で専用に設けられた風流舎は、先の通り元々レーシングカーの50%スケールモデルを用いた空力解析のために建設された風洞であり、その設計上、風洞内に流れる空気については、安定した温度と均質な風速分布を追求できる環境にある。つまり風管長99mに及ぶ水平回流式ゲッチンゲン式の模型風洞としては国内最大級規模を誇る。

 

この施設の提供開始に先立ち童夢では、元プロ・ロードレース選手で、現在は一般の方向けに競技用自転車のコーチをしている辻善光氏を招いて計測実証テストを行った。

 

 

その辻氏からは「これは我々が待ち望んでいた設備です。自転車メーカーが開発する製品は年々進歩していますが、それが本当にどんな性能を発揮するのかを確かめることができました。

 

今回計測して、これまで思っていたのと全く異なる結果が得られて、“なるほど”と納得することが何度もありました。空力的に有利な姿勢、体力的に有利な姿勢などの分析も細かく確かめられるので大変役に立ちました。

 

ドリンクボトルの有無については都市伝説的な言い伝えがあるのですが、これについても検証でき興味深い結果が得られました。いろいろなことをもっと試してみたなって、ワクワクしました」との回答を得ている。

 

 

一方、童夢では「精密な計測が可能な風流舎の自転車計測システムは、選手のみならず、フレーム、ホイール、ヘルメット、ウェアなどの開発にも活用いただけるものと自負しております。

 

今後、プロユースだけでなく、アマチュア・ホビー・サイクリスト、そして車いすロードレーサーなどにもご利用いただけるよう運用方法を検討する予定でいます。詳しくは、お気軽にお問い合わせください」と話している。

 

童夢

設計開発:構造・機構等受託開発/■受託試験:風洞試験、剛性試験、FIA 公認試験、走行試験、材料試験/
数値解析:CFD、FEM、ビークルダイナミクス等/
カーボンコンポジット:企画・設計・開発・試験・製造・販売/■機械加工:金属・樹脂等の機械加工/
試作車・レーシングカー:受託開発・設計製造、パーツサービス等全般
https://www.dome.co.jp/profile_n/service.html

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。