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2023年2月10日【テクノロジー】

独・自動車関連10社、オープンデータ網の組織的運用へ

坂上 賢治

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BASF・BMWグループ・ヘンケル・メルセデスベンツ・SAP・シェフラー・シーメンス・T-Systems・フォルクスワーゲン・ZFの1社が2月9日(欧州中央時)、自動車業界全体でCatena-Xユースケースの運用・採用を促進する目的で、Catena-X GmbHを共同設立した。

 

Catena-X GmbHは、先の10社により2023年に共同設立された合弁会社で、共同設立メンバーはそれぞれ合弁会社Catena-Xの株式を均等に所有する。本社はドイツ・ケルンに置く。なお設立・運営に必要な規制当局の承認は全て取得済みであり、同社は今後、事業活動を本格化させる予定。

 

 

Catena-Xのビジョンは、欧州市場に於いて自社及び第三者のビジネスアプリケーションのオープンネットワークとして運営して、自動車バリューチェーン全体で「Gaia-X」や「Catena-X」原則に準拠したセキュアで標準化されたデータ伝送サービスを実現させる事にある。

 

より具体的には、自動車バリューチェーン全体に於いてセキュアなデータ交換を実現する製品・サービスを提供するために利用。欧州市場を対象に開かれたアプリケーション市場の運営。並びにエコシステムの全参加者間での効率的かつセキュアなデータ交換を可能にする製品・サービスの供給を目指す。

 

このCatena-Xにより、バリューチェーン全体での材料の流れを追跡するエンドツーエンドのデータチェーンの運用化及び構築を大きく促進。オープンで信頼でき、協力的かつセキュアな環境下データの信頼性を高めていく構えだ。

 

 

この取り組みについてシェフラーAG最高経営責任者(CEO)のクラウス・ローゼンフェルド氏は、「サステナビリティに加えてデジタル化は、今日に於ける自動車業界の変革を推進するものです。

 

業界変革の実現には、バリューチェーン全体での信頼性が高くセキュアなデータ交換が不可欠です。これには高い水準が求められることから、強力なパートナー企業間で協調した取り組みが必要です。

 

 

シェフラーは、Catena-X設立メンバーの一社として、こうした極めて重要な目標に貢献していることを光栄に思っています。

 

また将来的には、CO2およびESGモニタリング、トレーサビリティ、サーキュラーエコノミー、ビジネスパートナー・データ・マネジメントといった自動車バリューチェーンでのユースケースを実施するためのアプリケーションや、サービスにアクセス出来るようになります」と述べている。

 

 

一方、Catena-X Automotive Network e.V.取締役会長のオリバー・ガンサー氏は、「Catena-Xは、公正な同データスベースを提供する事を目的として、Catena-X業界標準及び、ソフトウェア・アーチファクトの産業化の道を切り開こうとしています。

 

これまでには無かった真のオープンで相互運用可能な製品・サービスポートフォリオ提供の姿を誕生させ、参加各企業のために価値を導き出す事を目指しています」と語った。

 

なお運用上のテーマは「(1)脱炭素への取組み」「(2)安定した信頼の高いトレーサビリティ」「(3)持続可能なバリューチェーンのためのサーキュラーエコノミー」「(4)インテリジェントなビジネスパートナー・データ・マネジメント(BPDM)」、

 

 

「(5)自動車バリューチェーン全体でのサプライヤーと顧客との協力」「(6)中小企業での導入・採用を促進するための製品提供」「(7)開かれた市場」「(8)データ交換」などがありこれは個々テーマに関する概要は以下の通り。

 

 

(1)脱炭素への取組み
カーボンフットプリント追跡ソリューションにより、バリューチェーンにおけるCO2換算値の簡潔かつ正確な算定および報告が可能となります。こうしたソリューションを利用することで、Catena-Xの顧客は、カーボンフットプリントの透明性確保の取り組みに於いて一歩先を進み続け、潜在的なサステナビリティの向上を実現する事が出来る。更に実質排出量ゼロを達成するためのグローバルな取組みに於いて積極的な役割を果たす事が出来る。

 

(2)安定した信頼の高いトレーサビリティ
原材料から始まりリサイクル部品でループを閉じるサプライチェーン全体での部品・コンポーネントの追跡を実現させる。またトレーサビリティの活用により、バリューチェーンの全体像を明らかにし、サプライチェーンのレジリエンスを高める方法を見出す可能性を開いていく。

 

(3)持続可能なバリューチェーンのためのサーキュラーエコノミー
自動車業界に於いて材料リサイクルの重要性はますます高まってる。そうしたなかでコンポーネントの状態に関する情報をサプライヤーや顧客に、高い透明性を以て開示し、部品やコンポーネントを適切に再利用する事を可能としていく。またサーキュラーエコノミーを実施する事で、各企業は自社製品で使用しているリサイクル可能な材料の割合を増やし、無駄を減らす事を可能としていく。

 

 

(4)インテリジェントなビジネスパートナー・データ・マネジメント(BPDM)
企業は、顧客とサプライヤーのデータを最新状態に保持するため、多大なリソースを投入している。Catena-XのBPDMサービスでは、自動車業界全体に亘ってビジネスパートナーのデータを整理しデータの質を高めていく。また各データのソートや分析、整理も行える他、データのクオリティも高まっていく事から様々なメリットを享受出来るようになる。

 

(5)自動車バリューチェーン全体でのサプライヤーと顧客との協力
本テーマに関してCatena-X取締役のアレキサンダー・シュライハーは「バリューチェーン全体で全ての材料を追跡する事への需要が高まっている事がCatena-X設立に至った重要な要因の一つだ。

 

Cofinity-Xは、急速に拡大するエコシステムを構成する重要な要素となる。こうしたエコシステムには、自動車バリューチェーンに関わるすべての企業が等しく参加出来るようになる。そうしたCatena-Xの製品提供により、エンドツーエンドのデータチェーンを構築すると同時に全参加者の価値を創出出来るよになる」と話している。

 

 

(6)中小企業での導入・採用を促進するための製品提供
エンドツーエンドのデータチェーンは、全参加者に協力しようとする意志があって初めて成立する。しかし自動車バリューチェーンに関わる企業の多くは中小企業だ。Catena-Xでは、こうした主要な関係者に対し簡単かつ迅速な「オンボーディングサービス」を提供していく。Catena-Xのポートフォリオは4つの主要製品・サービスカテゴリーを対象に構築されており、最初の製品・サービス開始は、2023年4月末頃を目処に提供していく事を目指す。

 

(7)開かれた市場
各々の顧客が実行出来るビジネスアプリケーションの最適環境を作る事で、ネットワーク参加者の効率的な「マッチング」を可能とする事を目指す。また提供するアプリケーションは全てCatena-XとGAIA-Xのデータ交換原則に準拠させていく。

 

 

(8)データ交換
参加者間でのデータ交換は、データ主権が確保され、セキュアで標準化された原則を基礎とするもの。従って特定のソリューションに対してデータロックインを強制するものでは無い。参加者は各々自己のデータに対して完全な支配権を保持出来る。

 

また統合・共有サービスにより、市場で提供されるビジネスアプリケーションを推進し、相互運用可能なオープンソースアプローチでのデータ交換を可能にして各顧客の付加価値を確かなものにしていく。

 

加えてオンボーディングサービスにより、Catena-Xのエコシステムの採用を促進し、バリューチェーンの各段階に於いて自動車業界企業によるエコシステムへのデジタルコネクションを加速させていく。

 

 

 

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

松下次男

1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

間宮 潔

1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

片山 雅美

日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

中島みなみ

(中島南事務所/東京都文京区)1963年・愛知県生まれ。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者(月刊文藝春秋)を経て独立。規制改革や行政システムを視点とした社会問題を取材テーマとするジャーナリスト。

山田清志

経済誌「財界」で自動車、エネルギー、化学、紙パルプ産業の専任記者を皮切りに報道分野に進出。2000年からは産業界・官界・財界での豊富な人脈を基に経済ジャーナリストとして国内外の経済誌で執筆。近年はビジネス誌、オピニオン誌、経済団体誌、Web媒体等、多様な産業を股に掛けて活動中。

佃 義夫

1970年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として自動車全分野を網羅して担当。2000年出版局長として「Mobi21」誌を創刊。取締役、常務、専務主筆・編集局長、代表取締役社長を歴任。2014年に独立し、佃モビリティ総研を開設。自動車関連著書に「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)など。執筆活動に加え講演活動も。

熊澤啓三

株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

福田 俊之

1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。