NTTドコモは、国土交通省 国土技術政策総合研究所(国総研)、および東京大学 空間情報科学研究センター(東京大学)との共同研究により、人の流動を分析する国内最大規模(※1)の交通ビッグデータ「人口流動統計」(※2)を開発した。
ドコモはこれまでに、ドコモの携帯電話ネットワークの運用データを基にした人口分布統計として「モバイル空間統計」(※2)を実用化。防災分野や観光分野を中心に社会・産業の調査・分析の支援を進めてきた。
一方、交通分野では現在、人の流動・移動手段などの調査の為、国や自治体により都市交通調査(パーソントリップ調査(※3)など)が行われているが、おおむね、5年または10年に一回のアンケート調査が基本となるため、信頼性が高い統計情報をより短い調査間隔、かつ広い調査エリアで取得できる手段が必要とされてきた。
「人口流動統計」は、このような背景を受け、ドコモの通信技術やビッグデータの統計処理技術を活用し、交通ビッグデータとして開発。在圏する基地局を変更した携帯電話を統計処理することで、24時間365日、日本全域にわたり、どこからどこに何人移動したかを推計。
調査対象となるエリアの人口流動や、広域エリアにおける移動経路、移動距離、移動速度が推計でき、それらに基づく移動手段(飛行機、新幹線、高速道路)が推定できると云う。
また、これらの推計値は、曜日・週・月・年ごとの変動のデータとしての分析が可能。
地域間を移動する人の数が年代別、移動手段別にわかるため、高齢化社会や観光客の変動に対応した交通網計画に活用したり、大規模商業施設など人気スポットへの増便計画や、交通サイネージと連携した周辺地域の活性化や、2020年に向けて、通勤・通学者に加えて観光客が多い時間帯に公共交通機関を支障なく運用するための運行計画、複数のスポーツ施設をつなぐ交通計画など、周辺の商業施設の開発への貢献が可能だとしている。
同データは、国総研の都市交通分野の公的調査および計画立案に関する専門的知識、東京大学の都市交通分野のビッグデータ利活用に関する学術的知見、ドコモの通信技術および統計処理技術といった、3者の知見の統合で、統計的信頼性が高い、都市交通分野の様々な用途に活用できる交通ビッグデータであると云う。
なお、この共同研究成果は、国総研資料として公開(※4)されており、また国総研により、6月11日(月)に成果の報告会が開催される。
今後3者は、実用化に向け本データを生成・提供するためのシステム開発などを進めていくとしている。
※1:2018年6月4日(月曜)時点(国総研、ドコモ調べ)。
※2:「人口流動統計」、および「モバイル空間統計」は、ドコモの携帯電話サービス(2018年3月末時点で約7,637万台)を提供する過程で必要となる位置データや属性データなどの運用データを統計処理することによって作成された人口の推計値であり、顧客個人を特定できない統計情報。なお、法人名義の運用データなどは除去して推計している。
(「モバイル空間統計」に関する情報)
https://www.nttdocomo.co.jp/corporate/disclosure/mobile_spatial_statistics/index.html
※3:一定の調査対象地域内において「ある1日の人の動き」を調査するもので、交通に関する実態調査としては最も基本的な調査のひとつ。交通計画や道路計画、防災計画のための基礎資料として活用されている。昭和42年に広島都市圏で大規模に実施されて以来、64都市圏で実施されている。
※4:国土技術政策総合研究所資料(国総研資料 第1015号)「携帯電話基地局の運用データに基づく人の移動に関する統計情報の交通計画等への適用に関する共同研究」
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn1015.htm
[共同研究成果の概要]
1. 研究の実施期間
2014年7月1日(火曜)~2017年9月30日(土曜)
2. 共同研究体制と役割
<国土交通省 国土技術政策総合研究所>
「人口流動統計」の活用シーン毎のデータ仕様案の策定、「人口流動統計」の信頼性および都市交通調査への適用性評価
<東京大学 空間情報科学研究センター>
「人口流動統計」の活用手法
<NTTドコモ 先進技術研究所>
同社 プラットフォームビジネス推進部 携帯電話ネットワークの運用データを基にした「人口流動統計」の推計手法・実用化開発
3. 主な共同研究成果(実用化の範囲は別途検討)
(1)トリップ数の推計手法:
どこからどこに何人移動したか、出発地から到着地までの移動(トリップ)の総量がわかる。
(2)移動経路の推計手法:
出発地から到着地までの大まかな経路毎の移動(トリップ)の総量がわかる。
(3)移動手段の推計手法:
長距離を移動した際の移動手段(飛行機・新幹線・高速道路)毎の移動(トリップ)の総量がわかる。
(4)移動目的の推計手法:
出発地から到着地までの移動目的(通学・通勤・私事等)毎の移動(トリップ)の総量がわかる。
共同研究では、都市交通調査(パーソントリップ調査など)に適用することの有用性を確認。「人口流動統計」を活用することで、都市・交通計画、道路整備効果の検証、イベント時の交通整備等の取り組みをより効率的・効果的に実施することが可能となるとしている。
[人口流動統計の概要]
1. モバイル空間統計における位置づけ
2. 人口流動統計のアウトプットイメージ