NTTドコモとAGC、エリクソン・ジャパンは、自動車や鉄道などの車室内や建物内での安定した第5世代移動通信方式(5G)による高速通信実現に向け、28GHz帯の電波送受信が可能な「ガラス一体型5Gアンテナ」を用いた、5G通信に世界で初めて(※1)成功した。
28GHz帯の周波数は、これまでの第4世代移動通信方式(LTE)などで利用していた周波数帯よりも直進性が強く、車室や建物内で通信するときには電波が弱まってしまう傾向がある。
そこで電波が弱まる前に、車室や建物に貼り付けたガラス一体型5Gアンテナを用ることで、安定した5G高速通信を可能とした。
またアンテナは透明性が高く、建物や車両などに設置しても視野をさえぎらず、景観を損なうことがないため、車両や建物などへの設置の可能性が広がるとしている。
3社は、時速約30kmで走行中の実験用車両の窓ガラスにこのガラス一体型5Gアンテナを貼り付け、車内での5G通信速度を検証する実証実験を4月22日(月)から5月28日(火)に、東京都墨田区周辺の市街地で実施。
車内での5G通信速度を検証した結果、400MHzの帯域幅で下り最大3.8Gbps、基地局から半径約100mのエリアにおいて平均1.3Gbpsの5G通信に世界で初めて(※1)成功した。
今後もドコモ、AGCおよびエリクソンは、このアンテナを複数束ねてデータの送受信を行うMassive MIMO対応によるさらなる通信速度の向上や、基地局の設置が困難な場所や一時的な5Gの需要があるような環境における、5Gエリア拡充や用途拡大などの取り組みを進めるとしている。
※1:ドコモ調べ(2019年5月29日現在)。
[ガラス一体型5Gアンテナを用いた5G通信実証実験の内容]
1. 実証実験概要
東京都墨田区周辺の市街地で、時速約30kmで走行中の実験用車両の窓ガラスに、移動局に見立てたガラス一体型5Gアンテナを貼り付け、別の実験用車両の屋根の上に設置した5G基地局との間で28GHz帯の周波数を用いた、車内での5G通信速度を検証する実証実験を行った。
その結果、商用化時に使用する400MHzの帯域幅では、下り最大3.8Gbps、基地局から半径約100mのエリアにおいて平均1.3Gbps。
実証実験装置の送信可能な最大帯域幅である800MHzの帯域幅では下り最大7.5Gbps、基地局から半径約100mのエリアにおいて平均2.5Gbpsの5Gデータ通信に世界で初めて成功した。
実験では車両への技術適用を想定し、アンテナを車両の複数個所(フロントガラス、左右のサイドウィンドウガラス、リアガラスの合計4か所)に分散して配置することで、もっとも電波が強い方向を選んでのデータ送受信が可能。電波が障害物で遮られたり反射されたりしやすい市街地においても、安定した高速通信が実現できると云う。
2. 実験期間
2019年4月22日(月曜)~2019年5月28日(火曜)
3. 使用周波数帯
28GHz帯(帯域幅:732MHz、366MHz)
4. 実証実験のシステム構成
<実証実験装置・機器の主な仕様>
■5Gシステム
・5G無線装置&5G信号処理装置:MIMO機能(垂直・水平偏波に対応、各偏波2×128素子、基地局あたり最大4ビームを送信)、ビームフォーミング機能・ビーム追従機能
・ガラス一体型5Gアンテナ:垂直・水平偏波に対応、各偏波8素子、2素子をサブアレー化
・5G移動局装置:最大4ビームを受信
5. 各社の役割
<企業名、役割>
– ドコモ、実証実験全体の企画・推進および5Gの室内/屋内エリア設計
– AGC、ガラス一体型5Gアンテナの設計・開発
– エリクソン、5G基地局・移動局の提供および運用