デンソーとQuadric.inc(クアドリック/本社:Burlingame, CA、共同創設者兼CEO:Veerbhan Kheterpal)は10月29日(日本時間)に、AIの演算処理に特化した半導体のひとつであるAIの演算処理に特化したプロセッサーNPU(Neural Processing Unit)に関する開発ライセンス契約を締結した。
この契約締結により、デンソーはクアドリックのChimera GPNPU(Chimera General Purpose Neural Processing Unit/Quadric.incのプロセッサーアーキテクチャの名称)のIPコアライセンスを取得し、両社で車載用半導体IP(NPU)の開発に取り組んでいく。
自動運転やコネクティッドなど、クルマの知能化の進展に伴い、クルマは車載センサーから得た膨大な情報の他、車間・クラウドとの通信から得た情報をリアルタイムで処理する必要がある。そのために大量の情報を高速に効率よく処理できる車載SoC(System on a Chip/複数の機能を集積し、システムとして機能させる集積回路)の性能がますます重要となってくる。
デンソーとクアドリックは、これまでも車載SoC向けにChimera GPNPU(General Purpose Neural Processing Unit)を用いた半導体IPの開発を検討してきたが、このたび、デンソーのRISC-V(ISA/オープンな仕様のもと、誰もが自由に扱える命令セットアーキテクチャー)ベースのプロセッサーとクアドリックのChimera GPNPUを組み合わせた車載用半導体IP(NPU)の共同開発を正式に進めていくことを決定した。
デンソーのRISC-VベースのプロセッサーIPは、ISO26262のASIL(Automotive Safety Integrity Level/自動車安全水準):Dに対応しており、安全性の確保が重要となる自動車に最適化されている。
しかし今後クルマの知能化が進むとAIがクルマの価値を左右する鍵となる。クアドリックのChimera GPNPUは、行列演算とベクトル演算、およびスカラー(制御)コードを1つの実行パイプラインで処理できる特有のアーキテクチャー(設計構造)を持つことで、多様な演算処理にフレキシブルに対応できるため、様々なAIに適用可能。
またChimera GPNPUを用いることで、車載製品のシステム開発者は将来にわたり独自のAI機能を追加することができる。
デンソーとクアドリックは、新たな半導体IP(NPU)の共同開発を進めることにより、製品開発からリリース後まで、長期間に渡るAI潮流の変化に柔軟に対応可能な車載SoC実現へ貢献すると共に、より安全性の高いAD/ADAS(Autonomous Driving/Advanced Driver Assistance System/自動運転/先進運転支援システム)製品の開発を推進する。そして、半導体技術の開発を通じて進化を続けるモビリティ社会を支えていくと結んでいる。
<両社コメント>
株式会社デンソー モビリティエレクトロニクス事業グループ長 近藤浩氏 :
デンソーは、高度で多様な技術を組み合わせシステム化する力を用い、モビリティとつながる社会システムを発展させ、脱炭素や循環経済、交通事故死亡者ゼロなど、複雑化する今後の社会課題を解決していきます。その中で、クルマの知能化に向けたコンピューティング基盤の根幹となる半導体は強化する事業の一つです。このたび、クアドリックのChimera GPNPUを活用することによりAI潮流に柔軟に低電力で対応できる車載向け半導体IPを開発に取り組んでいきます。
Quadric.inc Veerbhan Kheterpal, CEO:
世界的に著名なTier1自動車部品サプライヤーとして知られるデンソーは、当社の技術を徹底的かつ厳格にベンチマーキングした上で、ADAS/ADプロセッサーIPの最適なパートナーとしてクアドリックを選定しました。このことは、当社のChimera GPNPUが継続的に成熟し、その幅広い応用性が認められたことを示す素晴らしい証だと考えています。