インバーター
デンソーは3月31日、同社初となるSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体技術(同社は予てより自社のSiC技術をREVOSIC=レボシックと呼んでいる)を用いたインバーターの開発を発表した。
当該製品は、BluE Nexus(本社:愛知県安城市、取締役社長:尾﨑 和久)の電動駆動モジュール「eAxle」に組み込まれ、3月30日発売開始のLEXUS初の電気自動車(BEV)専用モデル、新型「RZ」に搭載された。
このSiCパワー半導体は、シリコン(Si)と炭素(C)で構成され、電力損失を大幅に低減する半導体の材料で作られた。
パワーカード
BEVの動力源となるモーターを駆動・制御する役割を持つインバーターの駆動素子にSiCパワー半導体を採用する事により、従来のSiパワー半導体を用いたインバーターと比べ、特定の走行条件での電力損失を半減以下にした。この結果、BEVの電費が向上し、航続距離の延伸に貢献している。
同SiCパワー半導体の開発では、デンソー独自のトレンチMOS構造(デンソー特許の電界緩和技術を使用した溝=トレンチゲートを有する素子)を採用したSiCパワー半導体により、高耐圧と低オン抵抗(電流の流れやすさを示す指標)を両立。発熱による電力損失を低減する事で1チップあたりの出力を向上させた。
更に製造に於いては、デンソーと豊田中央研究所との共同開発による高品質化技術を基としている。
この技術に、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)委託業務による成果を取り込んだSiCエピタキシャルウェハー(基板となるSiC結晶上に結晶成長を行い、下地基板の結晶面にそろえて配列をする薄膜成長させたウェハー)を活用する事で、結晶の原子配列の乱れにより素子が正常に作動しなくなる結晶欠陥の半減を実現した。
加えて欠陥を低減する事により車載品質を確保し、安定的なSiC素子生産の実現に漕ぎ着けた。
デンソーでは「今後は2022年に採択されたグリーンイノベーション基金(GI基金/NEDOにより造成された次世代パワー半導体デバイス製造技術開発に係る基金)の助成も活用しながら、車両のより効率的なエネルギーマネジメントを目指した開発を通して、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献します」と話している。