デンソーは5月27日、「DENSO DIALOG DAY 2021」を、2021年5月26日に開催したと発表した。
「環境」と「安心」への取り組みを通じて、社会から共感され、「地球に、社会に、すべての人に、笑顔広がる未来を届けたい」という2030年の長期方針の実現に向けた戦略を発表した。
開催にあたり、社長の有馬 浩二は、次のように述べた。「2021年度は、新しいデンソーのスタートを切る年にしたいと考えています。事業領域をモビリティとモノづくりからソサエティまで広げ、新しい選択肢・価値の創造に挑んでまいります。CO₂ゼロ、交通事故ゼロに加えこれまでのデンソーにはない新しいビジネスにより、人と社会の幸せに貢献できればと思います。」
<環境戦略>
2035年までに生産活動におけるカーボンニュートラルの実現を目指し、3つの領域に取り組む。
・モノづくり:工場から排出されるCO₂をゼロにする
再生可能エネルギーの利用、徹底した省エネ活動の実行、低カーボンな材料・設備・生産工程の採用、Factory-IoTの導入などを加速。世界約200拠点の工場に先駆けて、安城製作所を2021年度中にカーボンニュートラルな工場とする。
・モビリティ製品:クルマの電動化に貢献し、CO₂を可能な限り削減する
駆動システムとサーマルシステムを核としたエネルギーマネジメント技術で、カーボンニュートラルに貢献する。BEV・HEV・PHEV・FCEVからe-VTOL、e-Fuel、非接触給電などの技術開発を全方位で推進して電動化の普及に貢献し、2025年に電動化分野で売上1兆円を目指す。
・エネルギー利用:CO₂を回収・再利用して社会全体のカーボンニュートラルに貢献する
再生可能エネルギーを貯める技術や、人工光合成のような新技術など、CO₂を再エネルギー化・再資源化する技術開発に取り組む。この技術により、家庭や産業から排出されるCO₂、大気中のCO₂を、必要な場所でどこでも回収・再利用できるシステムを開発し、この分野で2035年に売上3,000億円を目指す。
<安心戦略>
社会に「安心」を提供するリーディングカンパニーを目指し、3つの領域に取り組む。
・交通事故ゼロ:交通事故なく自由な移動を実現
車両の全周囲をカバーする車載センサーの開発を加速し、多様な事故シーンに対応する高度運転支援技術の開発に取り組む。また、価格面でも魅力ある製品の開発により、コア製品や後付け製品の拡販を加速することで、2025年にADAS領域で売上5,000億円を目指す。
・快適空間:心安らぐ快適な空間を創出
大気中のウイルス除去、有害物質の見える化技術を開発し、見えない空気への不安を解消する。また、温度・音・空気・視界の4つの環境をコントロールし、心安らぐ空間を創出。そして、2025年までに、車室内空間に普及させるとともに、公共空間への製品の提供も目指す。
・働く人の支援:人を支援し、人の可能性を広げる社会の構築に取り組む
自動車部品の開発・生産で培った技術を組み合わせ、各産業の課題解決を目指す。技術・品質までをトータルでシステム化したソリューションを提供し、2030年までに、農業・FA・物流の3分野で売上3,000億円を目指す。
<ソフトウェア戦略>
CO₂ゼロ、交通事故ゼロの実現を目指し、技術開発の基盤となるソフトウェア開発の強化に取り組む。
・クロスドメイン価値の提供
パワトレイン、ボディ、シャシー、コックピット、セーフティなど、これまで各ドメインの進化によりクルマの価値が高められてきた。さらなるクルマの「高度なインテリジェント化」に向け、ソフトウェア起点での開発を行うことで、クロスドメインでの価値創出を進める。また、2021年6月1日付で、新組織「電子PF・ソフトウェア統括部」を設立し、各事業に配置していたソフトウェア部門および人材を横断組織に集約し、ソフトウェア開発を推進する。
・業界標準の基盤づくり
カーメーカーとの開発経験を活かし、業界全体での標準化に取り組む。JASPARやAUTOSARなど標準化団体への参画を通じて、ソフトウェアの共通化を加速する。
・ソフトウェア人材へのリカレントシステム構築、運用
社員一人ひとりのキャリアイノベーションにつながる教育カリキュラムやスキル定義、認定制度を用意。また、成熟領域から成長領域へ2,000人規模、ハードウェア領域からソフトウェア領域へ1,000人規模で最適な人材配置を行う。
<成長戦略>
CO₂ゼロ、交通事故ゼロの実現と事業成長を実現させるサステナビリティ経営に取り組む。株主資本コストを上回るROE(自己資本利益率)を達成し、株主の期待値である株主資本コストを上回ることにより、継続的に企業価値を創造することを方針とし、2025年にROE10%、営業利益率10%を目指す。
・収益と成長の両立
カーボンニュートラルと収益向上の両立を目指し、事業ポートフォリオの入替を加速する。具体的には、内燃機関などの成熟領域は意志を持ってスリム化しつつ、CASE領域などの成長領域を拡大させる。その上で次の収益の柱として、CO₂回収、農業、FA、物流、e-VTOL、非接触給電などの新規領域の事業開発を推進する。
・固定費低減に向けたリソーセス投入
内燃機関を始めとしたメカ・ハードの設備投資は大幅に削減する。また、大規模なソフトウェア開発は、ソフトウェア改革により、効率化と新価値創出に取り組む。2025年には、研究開発費4,500億円、設備投資3,500億円を目指す。
・資本コストを意識した財務戦略・株主還元施策
株主資本比率50%以上を目標として、効率性と安全性を両立したバランスに資本構成を改善する。株主資本比率の増加を抑えるため、資本コストを意識した株主還元政策を実行・強化。配当基準をDOE(株主資本配当率)3.0%以上に刷新し、長期安定的に配当水準を向上させる。また、株価や資本構成の状況に応じ、より機動的に自己株式取得を実施する。