デンソーは6月8日、NTTデータと、車流データと人流データを活用した移動体験変革の実証実験を2020年6月から2021年3月に実施したことを発表した。
この実証では、移動体験・サービスの質向上、生活者の行動変容にともなう見込み客の送客支援の提供を実現するために、車載器から収集した運転特性や運転状況などの車流データと、スマホのGPSやBeacon反応ログなどから収集した人流データから、個人の特性を分析し、“運転状況の推定”と“個人の好みを把握”した店舗情報のレコメンドを行った。
デンソーによると、生活者は外出の際、目的地での買い物などの消費活動だけではなく、目的地までの楽しい移動や体験も求めている。しかし、サービスごとに個別のアプリやWebサイトで情報検索や予約、決済などの機能提供がされているため、「目的地は出かける前にWebで調べ、移動の途中で立ち寄る飲食店は個別のアプリで予約する」など生活者の体験は断絶している。今後、コネクティッドや次世代コックピット、自動運転などのテクノロジーの進展に伴い、車内で触れる情報が増えていくことから、車内外でのシームレスな体験を構築することで、生活者にとって価値のある移動体験を提供することが可能になる。
デンソーとNTTデータは、モビリティでの移動と目的地をつなぐサービスにおいて両社が協業することの強みに着目し、車流データと人流データを活用した移動体験変革の実証実験を行った。
モニターに対する3カ月の車両走行検証の結果、嗜好パターンや運転状況などユーザーの行動理解に基づいたレコメンドであるほど評価が高いという結果が得られた。これにより、車流データと人流データを組み合わせることによる移動体験への付加価値創出が可能であることが技術的に確認できた。
この取り組みにより、モビリティ事業者(自動車メーカー、カーシェア、レンタカー等)にとっては、「ドライバー体験の向上による顧客の取り込み」や「自動車をメディアとした新たな収入源の創出」が期待できる。一方サービス事業者(小売り、観光、商業施設等)にとっては、「自動車内でのサービス利用という新たなマーケットへの参入」や「利用者の行動変容による顧客の取り込み」が期待できる。
今後、両社の協業により、次世代コックピットやスマホ向けサービスといった幅広い顧客接点を確保するとともに、車流データと人流データによるユーザーの行動理解を軸にしたUXやコンテンツ提供の可能性をモビリティ事業者やサービス事業者とともに検討していくとしている。
■実証実験について
– 実証内容
車流データと人流データの掛け合わせにより得られるユーザーの行動理解に基づいたレコメンド機能の有効性を確認するため、以下の実証実験を行った。
・車載器のデータから得られたドライバーの「運転特性・運転状況」と、スマホのGPS、Beacon反応ログなどのデータから得られた「行動特性」をもとに分析したユーザーの興味関心に応じた店舗情報を、受容性が高いと推測されるタイミングでレコメンド
・提供したレコメンドの内容およびその評価の関係性を分析
– 実証期間
2020年6月~2021年3月末
(車両走行検証期間:6月~8月、分析・ビジネスモデル検証:9月~3月末)
※2020年4月に発令された緊急事態宣言の解除後に車両走行を実施
– 実証結果
3カ月の車両走行検証期間中に実施した2,217施設のレコメンド内容に対するモニターの評価を分析したところ、嗜好パターンや運転状況などユーザーの行動理解に基づいたレコメンドであるほど評価が高いという結果が得られた。これにより、車流データと人流データを組み合わせることによる移動体験への付加価値創出が可能であることが技術的に確認できた。