安全にクルマを停止させる技術、2022年投入。2025年から「2.0」に
マツダは11月4日までに次世代安全技術の「Mazda Co―Pilot(コ・パイロット)コンセプト」を公開した。ドライバーの急な体調急変時に、自動でクルマを路肩などに安全に停止させる技術で、2022年から「コ・パイロット 1・0」を、さらに2025年からは高度化した「コ・パイロット 2・0」を市場に投入する。(佃モビリティ総研・松下次男)
オンラインで開いた技術説明会で小島岳二常務執行役員は同技術について高度運転支援技術(ADAS)の一つとの見解を示し、自動運転のカテゴリーとは別物との見方を示した。
システムの位置づけは「ドライバー異常時対応システム(EDSS)の発展形」とし、目指すのは「交通事故を防止できる社会の早期実現だ」と強調した。コ・パイロットの実用化は、2022年に導入するラージ商品群から展開する予定。
コ・パイロット技術を開発した背景に掲げたのが、ドライバーの発作・急病などの体調急変に起因した事故増加。加えて、高齢ドライバーの疾患・体調急変による重大事故も近年は先進国で大きな社会問題になっている。
また、システムを開発した商品戦略本部の栃岡孝宏主査は「死亡重症件数は減っているが、実に78%のドライバーが運転中に眠気を感じている」と述べ、重大事故と眠気との関連性も示唆した。こうした社会課題に対応すべく開発したのが今回の「コ・パイロット コンセプト」だ。
万が一、ドライバーに異常が生じた時、「眠気に襲われる、意識を失ってしまう」などの状態を検知し、ドライバーにアラームで知らせた上で、運転できないと判断した場合は、クルマを安全に停車させ、必要に応じて緊急通報するシステムだ。
そのコンセプトは「いつもそばで見守ってくれる、あなたのパートナーのような存在」。コ・パイロットは「飛行機の副操縦士」を意味し、常にドライバーを見守り続けるという観点から名付けた。
コ・パイロット・システムは3つのコア技術で構成されている。一つ目はドライバーの状態を検知する技術。次に、コ・パイロットHMI仮想運転技術の存在がる。これはバックアップとして裏で仮想運転している技術といえるものだ。
そして最後に、ドライバーに異常が発生した時、自動で安全に退避・停止する技術から成る。
2022年から導入する「コ・パイロット 1・0」は、ドライバーの異常や居眠りを検知し、運転できないと判断した場合はウインカーやホーンなどで周囲に異常を知らせながらクルマを止めて安全を確保する機能を備える。
さらに可能な範囲で、高速道路では車線維持停止、もしくは路肩への退避を行う。一般道では異常検知時は車線維持停止を行い、眠気、居眠り検知時は注意喚起や警報で安全確報をサポートする。
2025年以降に導入する「コ・パイロット 2・0」では体調不良などの様々な状態変化の予兆を事前に検知する技術と高速道路では車線変更して路肩などに移動する技術、一般道ではより安全な場所へ退避する技術へと高度化を目指すとした。
発作・急病などの体調急変はその95・8%が時速60キロメートル以下で起こっているとし、高速道路だけでなく、一般道もカバーする必要があるとの見方を示す。
今回の技術と法体系との整合性については、2015年から国交省のASV(先進安全自動車)推進計画に参画して進めてきた中で、一定の理解が得られているとの見解を栃岡主査は示した。
具体的には、運転できない緊急事態の場合、まず迅速に止めて安全を確保することに社会的な重要性があるとし、それによって停止する場所が道路交通法の停止場所にマッチしていなくても、適用外となるとの認識が警察や関係省庁との間でコンセンサスが得られているという。
また、周囲に異常に走行している状態を伝え、こうした車両に近づかない、それから停止したあとの救護などについても国交省のガイドラインに明記されている。同技術と道路運送車両法、道路交通法との関わりついては国とともに調整を進めており、「それに基づいた車両を市場に出すことにしている」と述べた。
価格については標準装備とオプションによる差があるものの、「多くの人に利用してもらいたい」と述べ、リーズナブルな価格設定を検討する考えを示した。