量子ソフトウェアの開発企業のClassiq Technologies Ltd.( クラシック テクノロジー リミテッド )は6月24日( イスラエル・テルアビブ発 )、NVIDIAおよびBMWグループとのメカトロニクスシステムの最適化に係る協業を明らかにした。
上記のClassiqは、量子ソフトウェアのアルゴリズム設計から実行に至るまで、包括的なプラットフォーム(IDE、コンパイラ、OS)を提供する企業。これにより量子コンピューティングへのアクセスを民主化し、幅広い量子ハードウェアへのアクセスを含め、技術者が広く量子コンピューティング技術を最大限に活用できるようにすることを目指している。
今回の協業では、電気システムと機械システムの最適なアーキテクチャを見つけることに注力している。これは電動ユニット、バッテリー、エアコンなどの各種搭載装備の最適な組み合わせと、それらの接続方法を決定するためのもので、同プロジェクトは、車体全体の効率を高めてエネルギーの無駄を省き、その結果としてEVのエネルギー効率を高めることを目指すもの。
そこでClassiqは、量子近似最適化アルゴリズム(QAOA)やハロー・ハシディム・ロイド(HHL)アルゴリズムなど、最先端の量子アルゴリズムがどのようにこの問題解決に貢献できるかを実証した。
このうち後者のアプローチでは、振幅とデジタルエンコーディングを活用し、新しい量子アナログデジタル変換(QADC)プロセスを利用して複雑な線形方程式を効率的に解いていく術を探っている。
そうした取り組みを検討した結果、BMWグループの量子専門家は、Classiqプラットフォームの高度なモデリングとコンパイル機能を活用しつつ、NVIDIA GPUと強力なNVIDIA CUDA-Qプラットフォームを使うことで、大規模で複雑な量子回路の実装シミュレーションを実現。これにより量子プログラムの中でも最も複雑な量子サブルーチンを含む、高度に洗練された量子プログラムを作成した。
BMWグループITの未来計算責任者であるルーカス・ミューラー氏は「ClassiqとNVIDIAとのコラボレーションにより、自動車技術への応用の限界を押し広げる革新的な量子実装が可能になりました。NVIDIAの量子スタックは、この複雑なアルゴリズムのシミュレーションに役立ち、詳細なテストと改良を容易にしました」と述べた。
またClassiq TechnologiesのCEOであるニール・ミネルビは、「このプロジェクトは、量子計算分野におけるコラボレーションのパワーを実証するものです。量子ハードウエア、ソフトウエア、自動車分野の専門知識を結集することで、画期的な進歩を短期間で達成することができました」とコメントした。
更にNVIDIAのHPCおよび量子計算担当ディレクターであるティム・コスタ氏は、「量子計算は社会を一変させる可能性を秘めており、その価値をユーザーが最大限に活用するためには、極めて高性能な加速コンピューティングが必要となります。
BMWグループやClassiqのような革新的な企業とのNVIDIAのコラボレーションは、量子シミュレーションの限界を押し広げ、有用な量子計算の時代を切り開く一助となっています」と3社の協業の成果を説明した。
但し量子計算はまだ発展途上の技術であり、開発したソリューションを産業応用するためには更なる努力が必要とされる。Classiqと、Classitと協業する研究者は、量子設計、実装、計算の境界を広げることで、自動車技術と量子計算のインターフェースの開発を継続していく構えだ。