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2023年8月16日【エネルギー】

CATL、EV用LFPバッテリーで超高速充電の扉を開く

坂上 賢治

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CATLは8月16日(中国寧徳市)、10分間の充電で400kmの航続距離を可能にする世界初の4C超高速充電LFPバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン電池)「Shenxing」を発売した。( 坂上 賢治 )

 

同社では、1回のフル充電で700km以上の走行を保証することは、EVユーザーの急速充電性能への不満を解消させ、新たな超急速充電時代の到来を切り開くものだと述べている。

 

 

今回、リン酸鉄リチウムイオン組成で急速充電対応の新型バッテリーを開発・発表した理由は、急速充電時に於ける充電量に係る不満が、消費者のEVへの移行を妨げる最大の要因となっているためとしており、LFP バッテリーを再定義して、充電に係る不安の軽減を模索した結果だという。

 

新型バッテリーの開発にあたっては、LFP正極材料の結晶粒径を小さくすることで強度を向上させるナノ結晶化手法を導入。同正極材料の活用により、リチウムイオンの抽出と充電信号への素早い応答性を追求。併せてグラファイト表面の特性を変更し、組織内のインターカレーション(分子の空隙に他の元素が侵入する可逆反応)距離を短縮。電流伝導の流れを高速化した。

 

同時にユニット全体の導電率も高めるべく、電解液の粘度を低下させる新たな超電導電解液配合を用意。加えて極薄SEIフィルムも改良した他、セパレータも高い空孔率を設けてリチウムイオンの移動抵抗低減に努めたとしている。これらの対策により、新型バッテリー「Shenxing」の航続距離は700km以上となり、既存のLFPバッテリーの性能限界を超えたと説明している。

 

 

その充電プロセスは、まず低温では通常どおりの充電を開始。具体的には室温下の10分間のSOC値(充電状態を指す/State Of Charge)で充填量の80%まで到達。

 

その際、CATL はセル温度を制御する技術基盤を活用して、セルが最適な動作温度範囲まで素早く加熱されるようにし、マイナス10°C の低温環境下でも、 30分で0 ~80%の充電を可能にする。また充電中の安全性では、電解液を遮るセパレーターにコーティングを施してセル内温度を制御することで高い安全性を確保したという。

 

 

この新型パッテリーの発表会見でCATLの首席研究員を務めるウー・カイ博士は、「EVの購入・利用ユーザーがアーリーアダプター(初期採用層)からアーリーマジョリティ(前期追随層)やレイトマジョリティ(後期追随層)へと移行する中、EVに係る先進技術を誰もが利用できるようにし、誰もがイノベーションの成果を享受できるようにする必要があります。

 

当社は自らの強みを活かし、研究室から市場へ核心技術を素早く浸透させる能力を研き、Shenxingバッテリーの大量生産を可能にしました」と語った。

 

 

更にCATLのガオ・フアン最高技術責任者(CTO)は、「Shenxingの量産は今年末までに開始され、同バッテリーを搭載した電気自動車は来年第1四半期に市場に投入される予定です。

 

Shenxingの発売は、EVのバッテリー技術開発に於ける新たなマイルストーンとなり、以降、世界規模でe-モビリティへの移行を加速することになります。

 

今後も我々は、誰もが先端テクノロジーの成果を享受できるようにするという当社の理念を堅持し、先進テクノロジーのコモディティ化を推し進めて世界のエネルギー転換に大きく貢献していきます」と結んだ。

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坂上 賢治

NEXT MOBILITY&MOTOR CARS編集長。日刊自動車新聞を振り出しに自動車産業全域での取材活動を開始。同社の出版局へ移籍して以降は、コンシューマー向け媒体(発行45万部)を筆頭に、日本国内初の自動車環境ビジネス媒体・アフターマーケット事業の専門誌など多様な読者を対象とした創刊誌を手掛けた。独立後は、ビジネス戦略学やマーケティング分野で教鞭を執りつつ、自動車専門誌や一般誌の他、Web媒体などを介したジャーナリスト活動が30年半ば。2015年より自動車情報媒体のMOTOR CARS編集長、2017年より自動車ビジネス誌×WebメディアのNEXT MOBILITY 編集長。

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1975年日刊自動車新聞社入社。編集局記者として国会担当を皮切りに自動車販売・部品産業など幅広く取材。その後、長野支局長、編集局総合デスク、自動車ビジネス誌MOBI21編集長、出版局長を経て2010年論説委員。2011年から特別編集委員。自動車産業を取り巻く経済展望、環境政策、自動運転等の次世代自動車技術を取材。2016年独立し自動車産業政策を中心に取材・執筆活動中。

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1975年日刊自動車新聞社入社。部品産業をはじめ、自動車販売など幅広く取材。また自動車リサイクル法成立時の電炉業界から解体現場までをルポ。その後、同社の広告営業、新聞販売、印刷部門を担当、2006年に中部支社長、2009年執行役員編集局長に就き、2013年から特別編集委員として輸送分野を担当。2018年春から独立、NEXT MOBILITY誌の編集顧問。

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日刊自動車新聞社で取材活動のスタートを切る。同紙記者を皮切りに社長室支社統括部長を経て、全石連発行の機関紙ぜんせきの取材記者としても活躍。自動車流通から交通インフラ、エネルギー分野に至る幅広い領域で実績を残す。2017年以降は、佃モビリティ総研を拠点に蓄積した取材人脈を糧に執筆活動を展開中。

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株式会社アーサメジャープロ エグゼクティブコンサルタント。PR/危機管理コミュニケーションコンサルタント、メディアトレーナー。自動車業界他の大手企業をクライアントに持つ。日産自動車、グローバルPR会社のフライシュマン・ヒラード・ジャパン、エデルマン・ジャパンを経て、2010年にアーサメジャープロを創業。東京大学理学部卒。

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1952年東京生まれ。産業専門紙記者、経済誌編集長を経て、99年に独立。自動車業界を中心に取材、執筆活動中。著書に「最強トヨタの自己改革」(角川書店)、共著に「トヨタ式仕事の教科書」(プレジデント社)、「スズキパワー現場のものづくり」(講談社ピーシー)など。